第243回【夫婦編】「夫を信用できないのは私がいけないの?」

さいたま商工会議所運営の地域情報サイト「マイタウンさいたま」エッセイコーナーに連載中のQ&A「分かってるつもり? 男と女の胸の内」を1回遅れで掲載しています。

浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が、実際に研究所を訪れたクライアントさんの相談の中から「男と女の問題」に絞り、プライバシーに配慮して構成した事実に基づくフィクションで、「職場編」「恋愛編」「夫婦編」「親子編」「子親編」の5つの話題を提供しています。

今回は夫婦問題のQ&A。

【Q】
夫の行動に不信感を持っています。残業とか休日出勤とか言ってどこにいるのか分からない時間があったり、明らかにどこかに遊びに行ったらしいレシートが財布に入っていたり…、本人に訊いてものらりくらりで納得がいきません。夫は「これ以上説明のしようがない」って言うんですけど、ごまかしているとしか思えません。先日、興信所に頼んで、一週間夫の行動を調べました。結果、何もなかったんですけど、それ以上はお金が続かなくて…。夫のスマホはロックがかかっていて見られない。でもパソコンでスイカの履歴は見られたので3ヶ月ほど遡って調べたら、仕事とは関係なさそうなところに何度も行っているのが分かったんです。それを夫に突きつけたら、逆ギレされて「人の財布の中身を見たり、行動をチェックしてるのかよ!」と怒鳴られました。夫は「そんなに俺を信用できないなら離婚しよう」とまで言うんです。私は専業主婦で子どももまだ小学生ですから離婚は考えていません。信用しろって言われても、信用するなんて無理です。夫は信用しない私が悪いって言うんですけど、私が悪いんでしょうか?

【A】
日々、辛いでしょうね。もし、あなたが過去に男性からひどい裏切りをされたり、親から虐待を受けたりして、愛着障害やアダルトチルドレン的な症状を持っていないとするならば、夫の行動に不信感を持っているのは正しい勘だと思います。昔から「女の勘は鋭い」と言われていますが、これには根拠があります。
女性は洞窟で生活していた時代から、子どもを身ごもり出産して育ててきました。その間、数年間は男性が狩りで獲ってきた獲物を分けてもらって生き延びるしかなく、男性の行動や機嫌に敏感になっていたと考えられます。今は、とっくにそんな時代は終わっているのですが、遺伝子の中に相手の言動に敏感なものが残っているのでしょう。

さて、あなたの夫ですが、興信所に1週間、行動を調べてもらっても何も出ないというのなら、「本当に何もない」か「興信所に気づいてあえて何もしないでいた」とも考えられます。1週間程度では確かな調査というには期間が短すぎるように思います。最近、興信所では多種多様な機材を駆使したり、多くの情報を収集したりして、正確な調査をし、離婚の訴えの時など、裁判所も証拠採用するところまでなっています。

あなたが日常的に感じている不信感の根拠である残業、休日出勤、財布の中のレシート、Suicaの履歴、等々を突きつけた時の夫の「人の財布の中身を見たり、行動をチェックしてるのかよ!そんなに俺を信用できないなら離婚しよう」という言葉から判断すると、あなたが考えているように「外に誰か付き合っている人がいる」というのもまんざらでもないように思います。

具体的な人がいるかどうかは別にしても、あなたとの夫婦関係に充実感を持っていないことは確かです。大切なことは、夫の不審な行動が始まって、あなたがそれをチェックし、不信感を持ち始めたころ、すでに夫婦関係が壊れ始めていたということをあなたが自覚する(認める)ことです。ここまで来てしまうと、夫のいう「離婚」も視野に入れる必要もありますが、小学生のお子さんもいてあなたは専業主婦、離婚は考えていないとのことなので、いったんこの状態を白紙に戻して、夫をできるだけあなたの監視から解放してみてください。

おそらく、再び疑いの気持ちがモヤモヤ湧いてくるでしょうが、それはもしかすると、夫ではなくあなたの生育歴に何か原因があるのかもしれないので、ご自身の過去に、裏切りや虐待を経験していないか振り返ることもしてみた方がいいかもしれません。

フレデリック・パールズという心理学者の詩に「パールズの祈り」というのがあります。
私は私のことをする
あなたはあなたのことをする
私はあなたの期待にそうために この世に生きているのではない
あなたはあなた 私は私である
もしたまたま私たちが出会うことがあれば それはすばらしい
もし出会うことがなくても それはいたし方のないことである

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