Q.
「今の社会って女性が差別されてるでしょ。だからバランスを取るために女は男にわがままでいいんだよ」。その言葉に惹かれ付き合い始めました。〝××が食べたい〞〝××がほしい〞〝××に行きたい〞、ほぼ何でも実現してくれます。やったことはないけど、私が浮気しても怒らなそう。私が彼に要求したことには応えてくれるし、彼が私に〝ああして、こうして〞って言うことはないんで、私は楽です。それが彼の言う「女は男にわがままでいい」ってことなんですかねえ?確かに私に何か要求はしないけど、でもそれって〝俺はおまえに何でもしてやってる。だから俺は自由にするよ。おまえは俺のやることに口出しするなよ〞、そんな風に感じてしまって、彼を全面的に信頼できないんです。
A.
あなたは「彼を全面的に信頼できない」とおっしゃっていますが、もし今の彼がありのままの彼だとしたら、ジェンダーのことをしっかり理解した最高の男性と巡り会ったということかもしれません。逆に彼の本音があなたが感じている「俺はおまえに何でもしてやってる。だから俺は自由にするよ。おまえは俺のやることに口出しするなよ」だとすれば、相手を騙してでも自分勝手にしていたい最低の男ということですね。あなたが後者の可能性を捨てきれないのは、彼の言う「わがまま」という言葉の持つ意味を諮りかねているからでしょう。
明治時代、日本では女性に選挙権はなく、姦通罪は女性にだけ罰則があり、買春は公認されており、夫から性病をうつされ、子どもが産めなくなると離婚された女性もいました。平塚らいてうや市川房枝らが女性の政治集会への参加などを禁じた治安警察法改正の署名運動や働く女性の支援、性に関する権利、消費者運動など様々な取り組みをしました。100年前、日本初の女性のための文芸誌「青踏」が「元始 女性は太陽であった」というらいてうの言葉とともに発刊されました。その言葉が今、改めて輝いて見えるのは、未だに女性議員の割合はたった14%、セクハラや性犯罪は相次ぎ、ワンオペ育児で、夫の家事育児時間は46分と妻の6分の1にも満たない、などの現状があるからでしょう。100年前と違うのは「♯MeToo」運動をはじめ、様々な動きが女性を中心に起こり、それを多くの女性が支持し、社会を変える原動力となっていることです。
彼が女性の地位向上につながる社会の動きを踏まえて「わがままでいい」と言っているのか、それとも「わがまま」の意味を〝××が食べたい〞〝××がほしい〞〝××に行きたい〞というレベルで言っているのかということでしょう。後者なら女性の自由はむしろ束縛されると考えるべきです。あなたの場合、彼との関係がまだ表面的ですよね。もっと関係を醸成してみてはいかがですか。
ちなみに11月19日は「国際男性デー」でした。ジェンダーによって生きづらさを感じているのは女性だけでなく男性も同様です。(一社)Lean In Tokyoが『男性が職場や学校、家庭で感じる「生きづらさ」に関する意識調査』を実施していますので、ご興味がある方はぜひ見てみてください。(http://leanintokyo.org/20191106press-release/)
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