男と女のQ&A【親子編】「ジェンダーに対する意識が違う」

 
【Q】
娘が保育園に入園しました。親から離れるときは泣き騒ぐ子が多い中、うちの子は私の方を振り向きもせず、どんどん部屋の中へ入っていってしまいました。「いい子に育って良かった」という気持ちと「ちょっとくらい泣いてよ」という気持ちが交錯して、複雑でした。
都内勤務の人がほとんどの保育園なので、ジェンダーフリー的な親とそういう親に育てられている子どもたちというイメージを持っていたんですけど、入園式に行ってみると「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく」というのが徹底されていました。保育園の方針ということではないとは思いましたが、娘が生きていく時代は、「日本で」という時代ではなく「世界で」という時代になると思うので、ジェンダーフリーが当然でないと困ります。園には意見ができると思いますが、感覚がまったく違うように思えたので、子ども同士、親同士の関係をどう作っていけばいいのか、とても不安です。
 
【A】
娘さんが保育園入園の初日から泣かずにどんどん部屋の中へ入っていったとのこと、親としてはちょっと寂しかったようですが、とてもいい子育てをしているようで良かったですね。アメリカの発達心理学者エリクソン(1902~1994)は、人生を8つの発達段階に分け、それぞれの時期に発達課題があり、人はそれを達成しながら生まれてから死ぬまで発達し続けると言っています。各発達課題を健全に達成できなかった場合に陥る危機(クライシス)の存在も明らかにしました。人が精神的に豊かな人生を送るためには、各発達段階の課題を健全に達成していくことが必要であると主張しています。
 
8つの発達段階(ライフステージ)の最初が乳児期(0~2歳ごろ)。ちょうど、お子さんが入園された今の時期に当たります。その時期の発達課題は「基本的信頼関係の形成」です。母親、父親などの養育者が、子どもの欲求を察知して満たしてやったり、子どものサインに応えてやったりするなどの関わり合いの中で、子どもは養育者への信頼感を養っていき、「自分は大切な存在なのだ」と自分自身への信頼感も持つようになっていきます。
 
養育者や自分に対して信頼感を持つことができると、そこを安全基地として養育者以外の人たちや社会に興味を持ち、関わりを広げていくようになります。反対にこの時期に「基本的信頼感」を形成できないと、自分の存在を否定したり、周囲の人に否定的な感情を持ったりするなど、人や社会に対して「不信感」を持つようになってしまいます。この時期に健全に「基本的信頼感」を周囲の人や自分に対して形成できるかどうかは、のちのパーソナリティ形成の基礎となる部分なので、非常に大切です。自分一人では生きることのできない乳幼児は、温かな愛情と安全で安心できる養育を信頼して生きていくのです。このような愛着(アタッチメント)や「基本的信頼感」を形成することが、この時期の発達課題であるとエリクソンは述べています。
 
当然自分は「女の子」であったり「男の子」であったりすることにも信頼感を持ち、どちらの性であっても平等に大切にされることを学ぶのもこの時期です。折に触れて園長先生や保育士さんとも話をし、保護者会の役員なども積極的に引き受け、親同士の関係を作る中でジェンダーフリーを広げると同時に、お子さんの遊びや学びの中で、ジェンダーギャップに傷ついていないか気を配り、女の子だけれど「青色が好き」「外遊びが好き」「リーダーシップを取る」などがあったら、それを励ましてあげてください。
 
ジェンダーの問題は、保育園よりも、テレビやインターネット、お子さんが関わるすべての場所の問題なので、保育園だけを気にするのではなく、すべての場所、すべての機会の問題として捉えるようにしましょう。もちろん家庭の中も同様です。
第254回
 

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