メンタルトレーニングの限界

テニスプレーヤーの大坂なおみ選手の試合後の記者会見拒否について、「長い間うつを抱えてきた」と告白したことで世界中に激震が走りました。
アスリートというと、メンタルの強さが話題になります。「フィジカルは強くてもメンタルが弱い」、日本人に対してよく言われる言葉です。
すべてのスポーツで大事なメンタルですが、特にメンタルが問題になるのが、ゴルフやテニス、体操、フィギアスケートなど、1対1で戦ったり、直接相手と組み合うことのない競技です。
大坂選手が世界ランク1位になり、その後ランキングを落とした時に、もっとも指摘されたのがメンタルでした。
トップを走り、後ろから追いかけられるプレッシャーに対して、メンタルが強くなくてはならないのは当然で、日本でも技術や体調を整えるためのトレーナーに加え、メンタルトレーナーが重要になってきました。
そんな中で起こった今回の大坂選手の「うつ」問題は、これまでの「メンタル」の問題とは少し違います。
ここのところの彼女は、試合の結果だけでなく世界への発信力という点でも注目を集め、今後の活躍を疑う人はいなかったでしょうし、期待もしていたことと思います。
ところが、「会見拒否」から「4大大会から追放」とか「引退危機」とまで言われてしまうことになりました。
「最近、メンタルが強くなった」と言われていたところへの「長い間うつを抱えてきた」発言。よほど身近で彼女を見てきた人を除けば、「えっ!」と驚くばかりだったと思います。
しかし、これは十分あり得ることです。なぜなら、人として生きることの強さは「アスリートとしてのメンタルの強さ」と「一人の人間としての心の強さ」はまったく違うものだからです。試合で発揮できるメンタルはトレーニングで強くすることはできますが、人としての心の強さはトレーニングというより、家族であったり、周囲の理解者であったり、自分を受け入れ認めてくれる人たちの存在なくして獲得できません。
どうしてもアスリートは孤独になりがち。
アスリートといえども強いばかりの人間ではありません。「心を鍛える」のではなく、「心に寄り添える」人の存在が重要です。

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