【職場編】「だから女はだめなんです」

【Q】
私の会社には、40代後半のお局様みたいな人がいるんです。お局様っていうと、何となく怖そうで嫌なイメージですけど、私は必ずしもそうは思っていなくて、「面倒見のいいお姉様」っていうイメージで捉えています。でも、仕事はちょっとっていう感じかな。つい先日、そのお局様が、入社2年目の男の子に、お説教っていうかちょっと注意をしたらしいんです。中身はなんだったか分からないんですけど、そしたら、その男の子が「そんなこと僕だって分かってますから。いつもいつもうるさいんですよ」とか言ってぶち切れちゃったんです。それで終われば二人の問題でよかったんですけど、その男の子、そのあといろいろな人に「だから女はだめなんですよ。僕は女になんか言われたくないですね」なんて誰かれかまわず言うもんだから、若い女の子たちは、「お局様のせいで私たちまで悪く言われちゃってる」ってむくれちゃうし、女の先輩たちは、「ガキのくせに態度でかすぎ」ってカンカンになるしで、会社の中めちゃめちゃなんです。

【A】
「女性も学びたい!」と声を上げたために銃で頭を撃ち抜かれた15歳の少女マウラさんの事件はまだ記憶に新しい。私にはこの事件は衝撃的でした。その上、瀕死のマウラさんが入院したイギリスの病院の周囲を「アイ アム マウラ」と書いたプラカードを持った女性たちが彼女の命を助けてほしいと祈っていた1枚の写真も私にはショックを与えました。イギリスという先進国でもまだ女性たちは自由に学べなかったという事実を知ったからです。

1789年に起きたフランス革命の人権宣言は男性の権利しか規定されていなかったので、翌々年、オランプ・ド・グージュが「女権宣言」を発表したのですが、彼女の行動は「扇動罪」と断定され、1793年にギロチンにかけられました。世界で最初にフェミニズム(個人の尊厳を訴え、性差別の撤廃を求める)の声が上がったフランスでも、こんな悲惨な歴史があったことは、あまり学校でも教えてくれません。日本では女性が選挙権を持てたのは1945年、第二次世界大戦に敗れたあとのことです。私たち女性が選挙に行けるようになって、70年そこそこなんですよね。

「お局様」という言葉も江戸幕府の大奥で将軍のお世継ぎ誕生のために集められた女性たちの中で、もう「性」のお相手ではなくなった女性が「局」(部屋)を与えられて、若い女性の教育係にされた歴史からきた呼称で、決して尊敬や信頼を込めた呼称ではなく、「年を取って使いものにならなくなり、若い女性に嫉妬心を持っている女性」を表現する時に使います。

現にご相談者の職場でも、女性自らが「お局様みたいな人」と呼んでいるのが「女は若いうち」という差別と偏見に満ちあふれていることがわかります。まずあなた自身の中にある「女は若くて、かわいくて何も言わずにおとなしいのがいい」という偏見を捨ててください。40代後半のその女性は「怖そうではなく面倒見のいいお姉様」というのならなおさらです。

女の先輩たちは「ガキのくせに!」って怒っているというのですから、どうぞ仲間割れしないで、あなたも一緒にそこに加わり「女はだめ」「女になんか言われたくない」と明らかなセクハラ発言をした男性に異議を申し立ててください。
このまま「お局様のせいで」などと甘いことを言っていると10年、いえ5年後にはあなたも「お局様」と呼ばれ、陰口を言われます。この際、きっちり上司に話し、男性全員に指導させてください。

「女性にも男性と同じ人権を!」と主張してギロチンにかけられた200年前の女性の死を無駄にしないためにも、また売春防止法により、それまでの国策としての売春が禁止された現在でも、未だ性を売る女性が罰せられ、買う男性が罰せられないという差別をなくすためにも、「だから女は・・・」という言葉を私たちの中から消していきましょう!
(文:大関洋子)

2013/09/20(金)
第35回 【子親編】「女なんだから××」なんて…
【Q】
義父は戦前の生まれ。何かにつけて「女なんだから××」と言います。特に「嫁」については「こうあるべき」という考えがあるらしく、他の立場の女性に比べ私には厳しいように感じます。私が義父に最初に注意されたのはお茶の入れ方。義父にお茶を持っていくと、「女なんだからお茶くらい入れられなくてどうする!こんな薄いお茶はお茶じゃない。入れ直してくれ」と言われました。大声で怒鳴られたわけではないけれど、すごく怖かったし、腹も立ちました。女だからお茶をちゃんと入れられなきゃならないわけじゃないし、だいたい私の両親は薄いお茶が好きだし…。「そんなのおまえの好みの問題だろ!お茶くらい自分で入れろ!」と言い返したいくらいでした。夫の実家に行って義父に「女なんだから××」と言われないことがありません。私は両親に「女だから」と育てられたことはないし、強い違和感を感じます。夫の父ですからなんとかうまくやりたいと思うのですが…

【A】
女性は、幼い頃、「女」へんに「良い」と書き娘と言われ、結婚すると「女」へんに「家」となって「嫁」になる。そして「嫁」が年を取ると「女」へんに「古い」と書いて「姑」になる。「女」へんの字を上げてみるだけでなんて腹立たしいことでしょう。ポジティブな字はあまりありません。「女」の「子」と書いて「好き」という字があります。「好き」という意味を考えるといい意味にも取れますが、「女」は「子」でなくてはならないわけで、私のように年寄りは「好き」ではなくなってしまいますね。「娘」も同様ですね。
「姦」なんて最悪です。女が3人寄れば「姦しい」(かしましい)。「うるさくてたまらない」という意味です。小学校のPTAで講演に呼んでいただいた時、この話をしました。「男」という字を3つ書いたらどう読むのでしょう?と尋ねたら、皆さん首をひねっていました。私が黒板に「男という字を3つ書いて「うっとうしい」はどうでしょうと言うと、100人くらいの皆さんが大笑いになりました。大勢の中に男性は校長先生とPTA会長さんだけだったんです。ちょっとばつが悪かったでしょうか…。
もちろん、「男」を3つ書く字なんてないんですが。

さて、私たちの文化や生活はいわゆる男尊女卑と言われる歴史の上に長い間暮らしてきました。皆さんご存じのシンデレラは、フランス語で「灰かぶり」という意味で、いつも台所でかまどの灰をかぶって料理や洗濯、掃除をしているということです。シンデレラの展開は、魔法使いのおばあさんの助けでパーティーに行かせてもらって、そこでガラスの靴が脱げて…。白雪姫も皆さんご存じですよね。毒リンゴを食べて仮死状態なって、そこへ王子様がやってきて…。どちらもじっと待っていると最後は幸せになれるというお話しです。
ところが、人魚姫はどうでしょう。人魚姫は自ら王子様が好きになり、その気持ちを必死に王子様に伝えようとします。けれどもそれは果たせず、最後は海の泡となって消えてしまうのです。
これらは200年ほど前の童話ですが、このような童話の中にも女性はどうあるべきかがしっかりと示されているんです。男性は女性の身ごもる子どもが誰の子どもかはっきり分からないので、確実に自分の遺伝子を守るためには、女性を家に置いておく必要があったのです。

さて、シンデレラや白雪姫の話から200年ほど後世に生きているあなたは、義父に「お茶くらいご自分でどうぞ!」と言ってみますか?
それもいいかもしれませんが、解決にはならないので、「男」は「男」で、白馬に乗って登場しては、死体を「美しい!」と言って抱き上げなければならない辛い歴史の中に生きている、空威張りばかりしている気の毒な存在とでも考え、双方で少しずつ「女なんだから××」という回数を減らす努力をしてみてはいかがでしょうか。「男尊女卑」は女だけでなく、男もしんどいものですから。

第36回

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