【夫婦編】「不妊治療してるんですけどセックスレスなんです」

【Q】
結婚して10年になります。夫は結婚直後から「子どもはほしくない」と言い続けていたので、私もほしくないと言っている夫を説得してまで子どもを作ろうとは思いませんでした。でも私も38歳。後がなくなってきた今では、どうしても子どもがほしいっていう気持ちが強くなってきたんです。夫に気持ちを伝えたら、夫も反対はしなかったんですけど、実は3年前からセックスレスなんです。セックスレスで子どもはできるわけないんですけど、産婦人科に相談に行ったら、いろいろ調べられて、「不妊治療をしましょう」って人工授精を勧められて…。妊娠だけを考えたら、私の年齢では当たり前なのかもしれないけれど、子どもがほしいていう私の気持ちって少し違うような気がするんです。

【A】
男性の性行為は、「種の保存(遺伝子のコピー)」が原点ですが、人間だけはコミュニケーションの大切な手段として発達してきました。「種の保存」としてのセックスは営みならば繁殖期にだけ性行為を行えばいいわけですが、私たち人間は排卵期にだけ性行為をするわけではありません。大型ほ乳類は、遺伝子的には私たち人間と従兄弟に当たるくらいの類似性がありますが、彼らも繁殖期には繁殖期であることが分かるよう雌のおしりが赤く腫れたり、仕草が変わったりします。雄は、外見からだけでも繁殖期と分かる雌と性行為を行うことで妊娠につながる仕組みになっています。最近の研究では、大型類人猿の種であるボノボは、種の保存が目的でない性行為を行っていることが分かってきました。友好、友愛を示す性行為を繁殖期でない時期に行って、親密度を深めたり、行為自体を楽しんでいる写真が発表されています。

さて、あなたのご夫妻の場合、愛のメッセージとしての性という点がすっぽり抜け落ちたまま種の保存、妊娠のみを目的とした人工授精に一足飛びに行く方法をドクターから勧められているわけです。あなたも「子どもがほしいっていう私の気持ちって少し違うような気がする」とおっしゃっているわけですから、まずは夫との話し合いをなさってはいかがでしょうか。なぜセックスレスになっているのか、どうすればそれが解消できるのか、そちらの問題解決が先だと思います。「夫も子どもを作るということは反対しなかった」とのことですから、あなたのことを嫌いになったとか、今後離婚を考えているとかいう、2人にとって危機的な状況ではなさそうですが、このままその点を飛び越して人工授精を行うことは2人の愛とか心とかいう目には見えないけれど大切なものに背中を向けて人生を歩いて行くことになります。

最近、私のカウンセリング研究所でもこのようなご相談がありました。実際にこういう形で第一子、第二子と出産し、子宝には恵まれたものの、何かずっと違和感があるということでした。

「いろいろ調べられて」とのことなので、ドクターとしてはセックスレスも「不妊」の一つと診断して、一足飛びに人工授精を勧めたのでしょうが、心理カウンセラーとしては、その前のご夫婦の話し合いをぜひ行っていただきたく回答申し上げます。

第38回

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