【親子編】「いくら何でも父親を避けすぎじゃない?!」

【Q】
高校1年生の息子と中学2年生の娘がいます。夫婦仲も悪くはないし、親子関係もいいし、とてもいい家族だと思っています。でも、最近それが崩れそうになってきました。というのは、娘が極端に父親を嫌うんです。父親が入った後のトイレは除菌スプレーを持って入り、トイレ中にスプレーしてから入るし、お風呂は息子の後は気にしないのに、父親が入った湯船には絶対入らずシャワーだけ。流しのボールに父親が使った茶碗が浸けてあると、別なボールに水を張り絶対父親の茶碗と同じ水には浸けない。あまりにひどいので、はっきり聞いてみたところ「だってお父さん、臭いし汚いんだもん!」と言います。私から見たら全くそんなことはありませんし、息子もそんな風には思っていないと思います。2、3年前までは、一緒にお風呂に入ったり、一緒に遊ぶことも多かった子なんです。父親と娘は仲がいいという話をよく聞きますが、うちは全く逆なんです。

【A】
よくあることです。女の子の心理的発達の一つの通過点と考えてください。「男性」という性を意識し始めたことの表現で、「男性」の代表が父親なのでしょう。この年齢の女の子は極端に父親を避けてあなたの娘さんのような行動を取ったり、もっとひどくなると「お風呂で裸になるのも嫌」という子や「お父さんに話しかけられるのも、話しかけるのも嫌」と言って、一切口をきかない時期のある子もいます。人間は何の関心もない人には「好き」とか「嫌い」とかの感情は抱かないものです。強い嫌悪感を表す心の裏側、潜在意識の底には、相手に強い関心を抱き、相手から関心を持ってもらいたいという気持ちが存在します。娘さんも無意識に「男性」や「性」に関心を抱き、それが「父親」という対象に向けられたのです。高校1年生の「兄」は対象外なのです。「父親」は「母親」のパートナー、「母親」の「性」の相手と捉えているので、同じ家の中の男性でも「兄」に対しては嫌悪の感情を表さないのに、父親に対しては「これでもか、これでもか」というほどの態度を示します。本人もわざと意識してやっているわけではなく、内面のもやもやしたものがうまく表せず、極端な行動に出るわけです。初潮が始まり、毎月やってくる月経や胸の膨らみ、身体全体が丸みを帯びてくる自分の身体の変化に精神的な成長が追いつかず、戸惑っている時期なのです。

「お父さん、臭いし、汚い」というのは、実際に臭かったり汚かったりするのではなく「性」を汚れたものと感じ、それに関心を持つことへの恐れとか不安とかを表していると受け取ってください。夫婦仲も親子関係も悪くないということですが、子育ての中で小さい頃から「あなたは女の子だから」とか「女の子なのに」とか、「男は男らしく、女は女らしく」という昔ながらの価値観で性的役割の期待に基づいた言葉かけをしてきませんでしたか? また、「性」に関わることをタブー視してきませんでしたか? こうした伝統的、保守的なタイプの子育てをする子どもは小さい頃から性的役割を意識した行動を心がけるようになったり、「性」に関心を持つことを好くないことと思ったりする傾向があります。すると、思春期に「性」を意識し、関心を持つことに罪悪感を抱き、娘さんのような行動を取って、異性への関心を表現することがあるようです。

あと数ヶ月、叱ったりり問い詰めたりせず、そっと見守ってあげてください。クラスで好きな子でもできれば関心はそちらに移ります。お父さん(夫)とは、娘さんの行動の気持ちの「わけ」をよく話し合っておいてください。

第39回

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