【職場編】「媚びを売る女に腹が立つ!」

【Q】
私の勤めている職場は圧倒的な男社会です。上司に指示された書類を作って持って行くと、男性社員のものは即OKが出るのに、私だと「いつになったらまともな仕事ができるんだ?!」と怒鳴られて作り直し。この前なんて、同僚の男の子が忙しくて作れなかった書類を代わりに作ってあげたんです。その男の子が上司に持って行ったらすぐOKになりました。真実を暴露してやろうかとも思ったけど、その子に食事おごってもらっちゃったし暴露はやめましたけど、ただの差別だっていうことがよく分かりました。でもまあ、それはそれで、同僚からは差別されてないし、女だからって差別できないくらいの仕事をしてやるぞって思うんです。私が一番腹が立つのは、そういう差別をする男に媚びを売る女。同僚にもいるんです。私かわいいでしょみたいなブリッ子しちゃって、平気で尻振っちゃうやつ。「おまえみたいなやつがいるから私が差別されるんだ!」って叫びたくなります。

【A】
そのお気持ちよく分かります。女性の中に内なる偏見があって、「男は度胸、女は愛嬌」とばかりに任侠ドラマよろしく振る舞う男や女がこうした差別を助長させているのはおっしゃる通りです。私たち女性でさえ心の奥深くに「女はこうあるべき」という「常識」が根っこを張っていて、これを変えるのは容易なことではありません。男女差別をしっかり感じて怒っているあなたは小さい頃から「女だから~しなさい」とか「女だから~してはだめ」と親から言われずに育った数少ない幸せな女性なのでしょう。

実は私たちが普段から生活のよりどころとしている「常識」の中には「男は~であるべき」「女は~であってはならない」などという思い込みや矛盾が潜んでいます。生まれてすぐ着せられるベビー服にしても女の子のものはピンク色でレースのひらひらやリボンがついていて「かわいく」できているし、与えられるおもちゃも女の子は人形、男の子は自動車というように。幼稚園でも制服のあるところでは女の子はスカート、男の子はズボン。
男の子なら言葉遣いが多少乱暴になっても「男の子らしくなってきた」と肯定的にとらえられるのに、女の子だと「女の子でしょ、そんな乱暴な言い方はやめなさい」。それとは逆に、転んで膝をすりむいたりすると女の子には「よしよし、大丈夫?」となるのに、男の子だと「男の子でしょ、泣くんじゃないの!」。数え切れないほどの「常識」が私たちの中に刷り込まれていきます。絵本の中では、おとなしくてかわいくて優して、台所仕事の好きなシンデレラや白雪姫は王子様がやってきて幸せになれるのに、荒波の中王子を助け、自ら王子を追いかける人魚姫は声を失い、最後は泡となって消えてしまう。

小学校に入学して、名簿が男女混合名簿だったという方はほとんどいないのではないでしょうか。1985年のナイロビ世界女性会議で日本の男女別の名簿が問題になりました。1986年に男女雇用機会均等法、1999年に男女共同参画社会基本法が制定されましたが、現実は法律に追いついていません。

あなたが職場で腹を立てているのはよく分かります。実際にはあなたの作った資料なのに男性のものと勘違いした上司がすんなりと受け取ったエピソード。ほんとに腹に据えかねます。一緒に腹を立ててくれる女性、最近は男女差別を不快に思っている男性も少数ながらいるので、そういう方たちと手を結んで、おしゃべり会からでいいので勉強会(勉強などとは言わずに、まず理解者を中心の飲み会という程度の)でも始めてみてはどうですか。できれば男に媚びる女性もご一緒に。頭を銃で撃たれたにもかかわらず、「女の私たちも勉強がしたいのです」と言い続けたマララさんの勇気をたたえながら。

第41回

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