男と女のQ&A【親子編】「男友達ってめんどくさいという娘」

【Q】
大学2年生の娘と高校2年生の息子がいます。息子は部活に夢中で、朝早く出て帰りもかなり遅い時間です。息子については、ほとんど私の出番はなくなりました。娘の方は、小さいころから私と仲がよく、一緒に買い物に行ったり、食事の支度を手伝ってくれたり…。もちろん今でも仲良しで、日曜日はほとんど一緒に出かけます。息子だけだったら寂しい一生でしたけれど、娘がいてくれて本当によかったと思っていました。
ところが先日、娘と買い物に出かけたとき、娘の友達が男性と楽しそうに手をつないで歩いているのに遭ったんです。思わず娘に「あなた好きな人いないの?」と聞きました。「うん」、いないよ」と普通に答える娘に、さらに「寂しくないの?」と聞くと「お母さんと買い物するの楽しいから寂しくないよ。男友達ってなんかめんどくさいし…」と返事が返ってきました。
その時、思ったんです。「20歳になる娘に恋人がいないってなんか変」って。もしかして、私と仲良くしているのが原因でしょうか?
 
【A】
やっと「私と仲良くしているのが原因」で「20歳になる娘に恋人がいないってなんか変」と気づいてくださったんですね。
まさにおっしゃる通りで、母親と仲良くしていれば「男友達ってなんかめんどくさい」と逃げていられて「楽」な日々を送るわけです。
ですが人間の基本は「対人関係」をうまく出来るように成長し、互いに関わり合って生きていけるようにすることにあります。
 
人の成長の発達課題で重要な点はそれぞれの年代で周囲の人とどう関わるかです。その課題をクリアしてこそ、人は必要な対人関係スキルを身につけて生きられるようになります。
幼少期には親、特に母親と心身共に距離が近い関係にあり、その中から信頼関係や自立を学び、徐々に意識が親以外の第三者へ向いて行きます。
小学校の高学年から中学生の年代では親よりも友達との関係を大切に感じるようになり、特に同性の友人と仲良くして“どこに行くのも一緒”という時期があります。
この年代の次は青年期、思春期。異性とためらわずに交流する準備として、同性の友人を相手に人との心身の距離感をうまくとるトレーニングの時と言われています。この時期の発達課題を学んで初めて異性ともよい心身の距離が取れるようになり、恋愛、結婚をし、次世代への受け渡しがうまくいくわけです。
 
今、日本で話題になりつつある、アドラー心理学の提唱者であるアドラーは「子どもの教育で最も重要なことは“対人関係能力”を育てることである」と言っています。
人間の心は社会との関係の中で作られ、どのような人間関係にもうまく適応できるように子どもの成長を促すことが大切であると述べ、それを「共同体感覚」と呼んでいます。そしてこの感覚を身につけるには「相手の立場に立ってその心のあり方を想像する」という共感の能力を育てることだとも言っています。
(和田秀樹著「フロイトとアドラーの心理学」より)
この感覚は、人は生まれつき持ってはいるが潜在的な可能性であって、放っておいても身につかないものなので、ちょうど「自転車乗りの練習」同様、トレーニングが必要です。この共同体感覚が未熟だと自分の利益しか目に入らず、人との良好な関係が築けなくなり、心に対人関係の問題を抱えやすくなります。
気がついた今、娘さんから心身の距離を置くようにして、母との「楽」な対人関係から、他者、第三者との共同体感覚を失敗や苦労を経験しながらでも育てるように心がけてください。
これは、あなた自身のためにも必要なことですから。
第99回

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