男と女のQ&A【職場編】「扶養の範囲内で働くパートに腹が立つ」

【Q】
今年も11月になりました。この時期になると憂鬱になるんです。
うちの会社は女性の割合が多くて、それも主婦のパートの。主婦向きの仕事が多いんです。1日6~7時間、週に3~4日勤務なんていう人が多くて、扶養の範囲内で働きたいって感じ。この時期になると年内の給料が103万円を超えないように勤務を調整するんです。私たち社員がパートの人の分まで働かなきゃならなくなっちゃって…。
会社に何とかしてほしいって言っても求人広告にお金を出して人を増やすにはあまりにも短時間で短期だから、会社も何もしてくれません。
結局、私たちみたいな社員の負担が増えるだけなんです。負担が増えたって給料が増えるわけじゃないから頭にきますよね。パートの人たちが出勤したときの給料を私たちに回せって言いたいです。
国も会社も悪いんですけど、扶養にこだわって仕事をセーブしちゃう主婦の人たちって、一人の人として経済的に自立しなくていいんですかねえ?子育て中なら分かりますけど、子育てが終わった人も同じなんですよ。離婚の危機とかなったらどうするんでしょう?
 
【A】
あなたのお怒りはよく分かります。まったくこの「扶養の範囲」ってやつ、何なんでしょう。あなたのような社員はしっかり税金を取られるのに、主婦のパートの税金が控除されるって制度。
この制度が始まったのは1961年で、妻の収入が103万円以下の場合、給与所得控除の最低補償額65万円と基礎控除38万円が適用され、本人に所得税がかからないのと同時に夫にも配偶者控除(ここが問題なんですね)が認められ、所得税が減額される。103万円を超えて働くと夫婦合算の手取りが逆転してしまって働いた分が反映されない結果になるので、妻はそれ以上働くことにブレーキをかける。そのことで、あなたのような社員に負担がかかることになるわけです。
まあ、この103万円の壁というのも、1987年に「配偶者特別控除」という制度が設けられ逆転現象を是正できるようにはなりましたが、夫や妻の収入によって控除額が階段状に低くなります。
この制度の始まりは「内助の功」をルール化したもので、「夫が外で稼ぎ、妻が家庭を守る」という家族像を固定化している制度だという意見もあります。主旨としてはあくまでも扶養控除から別枠の控除で、低所得の人たちにも最低生活を認めるための優遇措置の一種で、専業主婦の家庭を優遇するためのものではなかったようです。ただ、現状としてはあなたが「この時期憂鬱になり」「頭にくる」という事態が起こっています。
あなたの怒りの解決方法として国がこの制度を見直すことが基本ですが、今年、政府と自民党の間でかなり踏み込んだ話になり、2017年からはこの制度が「配偶者控除」から「夫婦控除」に換えるというところまで来てまとまるのかに思いましたが、「配偶者控除」をなくすことへの抵抗も根強く、選挙を意識する中、結局見送られることになりました。男女平等へ一歩踏み出せるところでしたが、今のところそちらへ舵を切る見通しは立たなくなりました。
また、会社としても限られた期間のことですから求人広告を出す費用対効果を考えると何もしてくれないでしょう。
こうなると変化を期待するのは難しいですから、「頭にくる」と腹を立てるだけ「損」と考えて、ご自分の「考え方」か、「感じ方」または「行動」のどれかを変えてみませんか?
これをカウンセリングでは「認知行動療法」と言います。原理は「不幸な出来事が起こるから人は不幸になるのではなく、その出来事をどう受けとめるかだ」ということです。あなたのように「パートの主婦が休んだ」=「私の負担が増える」=「頭にくる」と考えるのを自動思考と言います。これをあなたも言っているように「パートの主婦が休んだ」=「私は社員として働く」=「一人の人として経済的に自立している!」=「離婚の危機が来ても大丈夫!」というように変えてみましょう。
コツは、はじめは「うそっ!」と思っても何度も何度も自分に言い聞かせてみることです。何度もそう言い聞かせることで、だんだんその気になれると思いますよ。
第106回

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