男と女のQ&A【子親編】「義母から結婚したいと言われ…」

【Q】
10年ほど前、2世帯住宅を建てました。土地に少し余裕があったので、左右に玄関を並べ、私たちの方だけに2階をつけました。台所、お風呂、トイレは一応それぞれに付いているんですが、食事は私たちと一緒という前提で、両親の方のスペースには、間に合わせ程度の台所しか付けませんでした。玄関は2つあるとはいえ、建物の中の2つの扉で両方の行き来は自由なので実質一世帯住宅と変わりません。建てて3年、突然義父が68歳で他界してしまったんです。義父が他界して7年、義母は73歳になったんですが、先日「結婚したい人がいるんだけど…」と相談を受けました。それだけなら、大賛成なんですけれど、相手が義母より10歳くらい若いし、その上隣で暮らすって言うんです。そりゃあお義母さんの家ですからどう使おうと文句は言えないんですけれど、行き来が自由な扉の向こうに夫とあまり年の違わない見ず知らずの男性が住んでるなんてあり得ないし、土地と建物も義母との共有名義。相続のことを考えるととても賛成するわけにはいきません。
 
【A】
義母の再婚に反対の理由が(1)相手が義母より10歳若いこと(これは義母が亡くなり相手の男性に義母と共有名義の土地建物が相続されるのが困るんですね)、(2)73歳の義母の10歳若い相手、63歳の見ず知らずの男性が行き来が自由な扉の向こうに住むこと、の2つですね。
確かにあなたが困惑しているのはわかります。相続に関して言えば、今まで少なくとも10年は同居同然の二世帯住宅で、夫の両親と暮らして来られ、それなりの苦労もし、「義母亡き後は土地建物を相続して」とお考えだったのに、10歳年の若い、見ず知らずの男性に半分も持って行かれてしまうと思うと悔しいですよね。
そして、その「見ず知らず」ですが、義母にとってもどこかで初めて出会ったときは、あなた同様「見ず知らず」だったのでしょうが、今は時間と行動を共有することで価値観が同じで死を迎えるまでの人生を共にしたいと思うような「よく知った」間柄になったのでしょう。
人は皆、初めて出会ったときは「見ず知らず」です。その「見ず知らず」同士が関わり合いながらお互いの価値観を確かめ合い、探り合って理解を深め、「知り合い」になっていくのです。人と人との関わり合いの中にこそ生きる喜びがあります。もちろん、価値観の違いが思わぬところで生じてそれが葛藤を生むこともあるでしょう。それをどう乗り越えるかも人と人の関わり合いの知恵の出しどころ、葛藤や葛藤を乗り越えるプロセスも喜びとなることもあります。義母がどのようなプロセスを経て、息子や息子の妻であるあなたには今は「見ず知らず」の男性と共に人生の最後を共にする決心をされたか分かりませんが、相当の葛藤と勇気のいる決断だったのでしょう。
あなたは、この結婚に反対の理由に2つのことを挙げています。あなたの反対の理由は、一見すべてが現実の問題に見えますが、実はその心の奥に「73歳にもなって、しかも夫が他界して7年。しかも10歳も年の若い男性と再婚するなんて!」という困惑、いかり、驚きがありませんか?これを心理学では「潜在意識」と呼んでいます。この潜在意識と現実の問題とを分けて考えましょう。夫を亡くした義母の不安や淋しさといったものにしっかりと目を向けましょう。長年連れ添ってきた夫との突然の別れ、今後も一緒に生活をしようと考えていた矢先の喪失感。そうした気持ちが、今後の生活を共にしようとする相手を欲するのは当然のことです。そんなお義母様の気持ちを理解して、今後のお義母様の再婚と幸せを応援してあげてください。
さてその上で、もしあなたが不安を感じるのでしたら、扉を壁にリフォームし、行き来は玄関を使って行き来をする、相続の問題は、お義母様とよく話し合い、遺言書を作成するとか、生前贈与なども選択肢に入るのではないかと思います。いずれにしても、まずはお義母様の今後の幸せに目を向け、その上で、腹を割ってお話ししてみてください。
第135回

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