男と女のQ&A【親子編】「お洒落ばかりに気を遣っている息子」

【Q】
高校1年生の息子のことです。昨年、どこの高校を受験するかで、とっても悩みました。埼玉育ちでない私も夫も、埼玉県の進学校が別学中心であることに驚きましたが、私も夫も男子校という選択はしてほしくないという気持ちがありました。もちろん、息子が通う高校ですから、基本的には息子の選択ですが、息子も偏差値以上に男子だけという環境には抵抗があったらしく、共学の高校を選びました。問題はそのあとです。私も夫も、社会とは違ったある意味ゆがめられた構造の環境に置きたくないという気持ちだったわけですが、どうも息子は女子がいないのは嫌ということだったらしく、入学した途端、お洒落ばかりに気を遣うようになりました。毎日ファッション誌に出てくるモデルのような格好ばかりしています。思春期で、ある程度はやむを得ないと思います。でも、格好が人間の魅力ではないということを教えたいのですが、女の子にもてるというのは見かけだと思っているようで、どう話をしたらいいか困っています。
 
【A】
思春期は、昆虫でいうと「さなぎの時期」です。昆虫は幼虫からさなぎになった時、それまでの身体や手足の全部をどろどろに溶かして殻の中で再び新しい自分を創ると言われています。そして長い時間ジッとこのさなぎの中にこもって、やがて美しいアゲハチョウになったり、夏の風物詩のような蝉になって地中から飛び立つわけです。
思春期の子どもはまるで「さなぎ」のようです。子どもから大人に変わる時に、自分で作った殻に閉じこもり、自分自身を溶解し新しい自分を産み出すいわゆる「第二の誕生」を迎えるための準備を始めるのです。
親の言いつけをよく守る聞き分けの良かった我が子が、ある日突然子ども部屋に閉じこもったり、食事も一緒にしたがらなくなり、夜中になるとコソコソと動き出して冷蔵庫の中の物を食べたり、家族との接触を極力避けたりします。
こんな時期が過ぎると突然部屋から飛び出してきます。金髪、ピアス、マニキュア、息子さんもファッション誌に出てくるモデルを真似したのでしょうね。高校受験というストレスを抱えてさなぎに閉じこもっていた彼は、さなぎから飛び立つ蝶の装飾としてそれを選んだのでしょう。さなぎが殻に閉じこもっている時、親としては心配で、「いったい中はどうなっているんだろう」とのぞいたり突っついたりしたいものですが、昆虫の場合、そうされると新しい細胞を創生中のさなぎは、変形したり傷を負って成虫になることが難しくなります。
あなたも、さなぎからかえった息子の姿にびっくりしているようですが、必死で自分づくりをして、羽化しかかっているわけですから、今は触らないで、羽が乾ききって飛べるようになるまで見守ってあげてください。子どもに一切関わらないということではなく、外敵からは守ってあげるように、環境設定しながら居心地のいい空間は作ってあげましょう。
人間の魅力が見せかけの格好だけではないことに気づいてもいるはずです。羽化のきっかけと時期は一人ひとり違います。けれども、さなぎは必ず自分に似合った衣装を身につけて羽化し、ふさわしい飛び立ち方をします。そしてそのモデルは母であるあなたであったり、父であったりすることを忘れないようにしてください。
第134回

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