【Q】
現在中学3年の娘は3歳年上の兄の影響もあり、小学3年生の時から地域の少年団で野球をやっていて、中学でも男子だけだった野球部に入部して、男子と同じように普通の野球部員として野球をやってきました。
学校からソフトボール部に入るよう説得はされたんですが、本人が「野球とソフトボールは違う」と譲らず、学校が折れた形で野球部に入ることができました。人数が多いのでレギュラーにはなれませんでしたが、練習試合には出してもらっていました。
夏休みが明けて高校選択を真剣に考える時期になり、高校でも野球部に入って甲子園に出たいと言い出したんです。女子でも野球部に入れるか確認したんですけど、返ってくる答えは「前例がない」とか「マネージャーとしてなら」とか…。女子野球部があるところもあるにはあるんですが、娘は「テレビでやってる高校野球をやりたいの!」と全く聞く耳を持ちません。
マネージャーとして入部するように説得するのか、女子野球部に入部するよう勧めるか、それとも親として学校と交渉するか、どういう方向で進めればいいのか困っています。
【A】
あなたのお子さんのように女子で「野球」をやりたい方も増えており、女子高校生の野球競技参加の意識も年々高まっていますが、残念ながら日本高等学校野球連盟は「危険防止」の観点から男子野球部員と一緒に大会に参加することは認めていません。
今から20年ほど前、1995年6月に北京市の女子硬式野球チーム、韓国のチームが日本を訪れ「親善高等学校女子硬式野球大会」を開催しました。そのことがきっかけとなり、日本でも高校レベルにおける女子硬式野球の全国大会を開催すべきであるという気運が高まり、その開催母体として1997年、全国高校女子硬式野球連盟が結成されました。
2014年には全日本野球連盟にも加盟して2013年までの「任意団体」から全日本野球協会の傘下で「女子高野連」としてビジョンを持った育成システム作りやPR、規定作りが進められています。第1回全国高校女子硬式野球大会は1997年8月福生市で行われました。現在、関東では埼玉栄高校(全国大会優勝7回)、花咲徳栄高校、叡明高校、作新学院、駒沢学園等、関西でも、鹿児島や宮崎の高校27校に女子野球部があります。
お子さんは「甲子園で」と言っているとのことなので、それが男子に混じってということであれば、先ほど申し上げたように、夢は叶えられないのが現状です。ただ高等学校の部活で野球をやりたいということであれば、それは可能です。試合の場所も「11月なら甲子園が空いている」という意見もあるようですが、11月は高校生としては、期末試験、大学入試、就職試験を控えた大事な時期で、高校生活は野球のためにだけあるのではないという現場の意見で不参加を表明した学校があり実現しませんでした。
100年続いた男子の甲子園での野球は教育としての活動が根本であるため、大人の野球より制約が多く、日本高野連が勉学が高校生の本分であるとして、春と夏の大会以外はむやみに大会を増やさないよう厳しく戒めています。
女子高野連も春、夏の大会に男子の地方大会に相当するものとして3つ目のユース大会が加わったところです。今年、女子野球部創部準備を進めていた学校も加わると、約30校に女子野球部ができることになり、球場も毎年8月に兵庫県丹波市のスポーツピアで行われるようになるだけでなく、今年2018年には加須市の市民球場を女子の高校野球の聖地にしようと市が5億円をかけて改修中とのことです。
あなたのお子さんは、こういった歴史の中で、選手としては不可能な男子野球部のスコアラーやマネージャーとして野球に関わるか、女子硬式野球部員として野球をやり続けるかの選択をしなければなりません。女子野球部の歴史はまだ始まったばかりですが、着実に広がっています。歴史や現状をよく調べて、場合によっては部活動の見学などもして、ゆっくり親子で考えてみてください。
第144回