男と女のQ&A【夫婦編】「風俗通いを男の甲斐性と開き直られて…」

【Q】
35歳、専業主婦です。夫は職場の先輩で3歳年上、結婚して10年です。
夫のスーツのポケットに風俗店のメッセージカードが何度か入っていたので、いつかちゃんと話をしようと思っていました。
先日、夫が帰宅したとき、女性ものの香水の匂いがしたので今がチャンスと切り出してみました。
最初はのらりくらりしていたんですが、さすがに匂いはごまかしきれないのと思ったのか、風俗店に行ってきたと白状したんです。
 
私のシナリオでは、そこで夫が謝ることになっていたんですが、状況は逆になり「風俗なんて男の甲斐性。だいたい今日は営業だ!」と開き直られてしまいました。「男の甲斐性?風俗で営業?ふざけないでよ!」と私が怒鳴ると「おまえだって、なんとかっていうグループのコンサートに出かけるじゃないか!それとどこが違うんだ?!」と怒鳴り返されて、それから口もきいていません。
夫がそんな考えの持ち主だなんて思ってもいなかったし、別れようかとも思うんですが、子どももいるし今後の生活を考えると、主婦をしている私には別れる決心がつきません。
 
【A】
売買春の人類史的起源は定かではありませんが、売春は世界最古の職業であるなどと言われたりするように、紀元前のオリエントにおける寺院売春が始まり(?)と言われています。ただこれは、産業化され、非合法化された現代の売買春とは同じ行為ではないとみられています。
 
日本では、10世紀の初め頃「遊女」や「白拍子」と呼ばれる女性の生業とされ、1589年には豊臣秀吉が京都二条柳町に「傾城屋」と呼ばれる晩春宿を集めて、遊郭を興したとされ、1617年には徳川秀忠が徴税の確保と治安維持を目的として江戸吉原を遊郭とした歴史が残っています。こうした公娼制度は貧しい親が娘を借金の形に売るという家父長制度の上に成り立っていたため、諸外国から批判され、明治政府は1872年「娼妓解放令」で人身売買を禁止しましたが、その直後「貸座敷、娼妓取締規則」で自由意志の営業を容認したため、貧困という現実の中で実質的な奴隷労働としての売春は、むしろ拡大していくことになります。
貧困層の女性たちの多くは、梅毒などの性病や過酷な性労働の中で自殺するなど、身を滅ぼすものも少なくありませんでした。
第二次大戦後、米兵相手の売春を整備するために組織された「赤線」の設置など、公娼制度は国策として展開されましたが、1956年の売春防止法は、その流れに一応終止符を打ちました。
 
1990年代以降、売春も一つの職業であるなどという「セックスワーカー」なる言葉も出たりして、売買春の是非の議論も出てきましたが、「売春防止法」は「売る女性を罰し、買う男性をとがめない」という極めて不平等、不公正なものです。売春を法的に禁ずるなら、売る側だけでなく買う側も処罰の対象とすべきなのは自明の理です。
 
女性は男性よりも売買春を非難する傾向が強いのですが、あなたのように自分の夫が「普通(素人)の女性」と浮気するのは絶対許せないけれど、「風俗の女性」が相手の性行為、しかも「営業だ」と開き直られると、「子どももいるし、主婦の私には別れる決心がつかない」という感じで迷ってしまいます。
 
あなたは、女性の性を買春するような夫とは思わず、結婚、出産、子育てをしてきたわけですが、今回のことで、人生の価値観に大きなずれがあることがわかったわけで、しかも売買春とコンサートを同等と考えて怒鳴り返し、開き直られてはたまったものではありません。
 
「風俗通いは男の甲斐性」という夫の価値観を変えるのはなかなか難しいことで、禁止すれば隠れてやることになるでしょうね。
ご自分の気持ちを夫に言い続けて、あとはお子さんの成長を待って別れるか、諦めて今の状況に目をつぶるか…。この価値観に納得できなければ、自立の道、仕事に復帰してこんな夫とは別の人生を歩く決心をするか、いずれかを選択するしかありません。
別れようというあなたの勇気を応援したいと思います。
第143回

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