男と女のQ&A【親子編】「息子というライバルに負けて」

【Q】結婚して18年、中学3年生の息子がいます。妻が私をどう思っているかわかりませんが、私は愛情を感じていないわけではありません。そうは言ってもお互いに愛情を感じていると思える瞬間はほとんどなくなりました。そんな瞬間があったのは結婚して5年間くらいだったでしょうか。妻は高学歴、高収入ということもあり、割と強いタイプです。そういう妻に惹かれて結婚したんですけど、リスペクトされないことにちょっと疲れました。しかも、妻といい関係を続けようとした時、邪魔になるのが息子なんです。女親が男の子をかわいがるなんてよく聞く話ですけど、息子がかわいがられているというよりは、妻の愛情のすべてが息子に注がれていて「私と息子がライバル関係にある」、そんな感じです。息子とのライバル関係に敗れた私の居場所は家庭にはない気がして、気持ちを外の女性に向けようかなんて考えています。
 
【A】
オーストリアの精神科医、ジークムント・フロイト(1856年~1939年)は精神分析の創始者として知られています。彼は神経病理学者を経て精神科医となり神経症の患者を治療するうちに、その病気の根底に、無意識の意識、「潜在意識」があることを発見し、たくさんの精神病患者を治しました。
 
フロイトの理論の中心となったひとつに「コンプレックス理論」があります。彼のいう「コンプレックス」とは「心のくせ」「心の偏り」という意味で、自分の内なるコンプレックスに振り回されていると生きづらく、損ばかりしてしまいます。しかもそれを「潜在意識下」、要するに無意識でやっている、とあなたのように家庭崩壊の危機につながってしまいます。人の言動の裏に潜むコンプレックスを知っていると、そのコンプレックス、心のくせ、心の偏りを刺激する言動をコントロールでき、自分や相手の抵抗(不機嫌、反発、怒り)を予防でき、行動や考え方を変化させ、危機を回避することができます。
 
ここであなたに知っていてもらいたい「心のくせ」は、フロイトが「エディプス・コンプレックス」と名付けた無意識の意識です。彼の提唱した5つのコンプレックスの中の典型例で、4~5才の子どもはだれもが異性親を好きになる傾向があり、異性親はその子を好んで愛する傾向があるという理論です。ギリシャ神話の中で占い師の宣託で川に捨てられたエディプス王子が成人して、実の親とは知らずに父を殺し、母と婚姻する悲劇から名付けられた理論です。
 
このエディプス感情が青年期まで続くようであれば子どもにとっても両親にとっても生きづらくなりますが、息子さんが中学3年生ということですから、あなたが妻にリスペクトされない、相手にされないことに不満や怒りを抱いて息子をライバル視することは、ますます、無意識のうちに自ら、このコンプレックスの渦に巻き込まれて家庭危機を招くことになります。まもなく息子さんは母離れする、もうしている、と思いますので、後は妻が子離れするのを助けるように、高学歴、高収入とのことですから、夫として彼女を支え、できるだけ、結婚して5年間くらいのことを思い出し、2人で食事や旅行に誘い出して、息子さん抜きの共有の時間を持つようにしてください。
 
あなたが「他の女の人に…」という気持ちは、フロイトのいう5つのコンプレックスの最後「退行コンプレックス」といって、いくつになっても幼児性が抜けず、人に頼ってばかりいるくせを実行することになり、ますます妻のリスペクト(尊敬)からは遠くなるのでおやめになり、夫婦の愛を回復するよう努めてください。
第179回

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