男と女のQ&A【夫婦編】「夫婦別姓問題で溝が…」

【Q】
夫婦別姓問題って政治の世界で長い間話題に上っているみたいですけど、全然進みませんよね。国会で議論が進んで民法改正なんてことになれば、だんだん世の中もそれに慣れていくんでしょうけど、政治がけりをつけられないんだから、国民だっていろんな人がいてひとつの方向には進みませんね。誰がどう思ってようと他人ならかまわないんですけど、うちは夫と私で意見が真逆なんです。私が別姓支持派、夫が反対派。こういう問題ってやり合いになるとどんどんヒートアップしちゃって、収まらなくなっちゃうんです。私は、別姓を名乗ることで、女性が一人の人格として認められて、絶対差別が減るって思ってるんですけど、夫は「別姓になったら家族としての一体感がなくなる」っていうんです。私が思うに、夫は女性が差別されてることなんてまた気にしてなくて、今まで通り男の自由に家庭も社会も動けばいいと思ってるんでよ。今だって夫に言いたいことはいっぱいあるけど、この溝が埋められないとこれから溝がどんどん深くなっていずれ離婚なんてことになっちゃうんじゃないかって不安です。
 
【A】
一般の人々が「姓」を名乗るようになったのは明治時代に入ってからです。それまでは姓を名乗っているのは貴族とか武士とか身分の高い人だけでした。庶民は自分が耕作している土地の所有者から恩賞として氏名(うじな)を貰ったり、地区の共同体意識を高めるために自分たちで土地になじむ名称(村田とか岡山とか川上とか)を名乗ったりはしていました。明治に入って1876年の太政官指令で、まず導入されたのが「夫婦別姓」で、「妻は実家の姓を用いる」と定められました。その後1898年に施行された民法では「夫婦は家を同じくすることにより、同じ氏を称する」とされたことに始まり、100年以上続いています。
 
結婚するには夫婦のどちらかの姓(名字)を選び、一方はそれまでの姓を捨てなければならないということは日本では当たり前の仕組みですが、現在の世界の先進国では実は日本だけの特異な法律です。だから日本人と外国人の婚姻では別姓を認めているのですが、日本人同士の婚姻には認めていないのです。日本では96%の女性が結婚して夫の姓を名乗っています(厚労省2016年)。
 
結婚しても仕事を続ける女性が増え、姓を変えることによる不便、不利益、夫の「家」に「嫁に入る」という従属的な差別感などから、姓を変えなくても結婚できる「夫婦別姓」も選べるようにしようという議論が社会的に活発になっています。「選択的夫婦別姓制度」と呼んでいます。「夫婦別姓を認めない」民法の規定について最高裁が「合憲」としてからすでに3年も経ちます。その間、あなたのような方たちから「別姓」を求める裁判が相次いでいます。地方自治体の議会を通じて声を上げる活動も神奈川県をはじめ請願書が47都道府県議会から提出されています。あなたの夫君が言う「別姓は家族の一体感がなくなる」という意見は、「別姓」になっている世界の国々でも、反対する人たちから出されていた意見です。他にも「親子で名前が違うと子どもがかわいそう」とか「結婚制度が弱体化する」とか、反対の意見もあります。
 
夫君の「別姓になったら家族としての一体感がなくなる」という意見はまさにあなたの思う通りで「女性が差別されていることは気にしないで、今まで通り男の自由に家庭も社会も動けばいい」という考えが夫君に無意識にあるのでしょう。「結婚制度」そのものについて考えてみてほしいです。
「事実婚」は別姓ですが、家族の絆が弱いでしょうか?むしろ夫婦2人が熟考してその型をとって堅く結ばれているかもしれません。超党派で「別姓」を支持する議員も多くなっています。このまま「離婚」へ行く前に女性差別の根本を夫と話し合うことをおすすめします。
第218回

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