男と女のQ&A【親子編】「気遣いできない嫁」

【Q】
息子が1人いるんですけど、結婚して車で3時間くらいの嫁の実家の近くに住んでいます。息子夫婦には子どもが2人いて、嫁の実家が近いので、出産の前後は向こうのお母さんに何かと面倒を見てもらっていました。下の子どもが生まれたのは一昨年の秋。半年もしないうちに新型コロナの感染拡大で、息子たちがうちに来ることができなくなり、私と夫が息子たちの家にいくこともできなくなりました。息子たち家族に会ったのは、去年のお正月が最後です。この状況ですから、しかたのないことですけど、私が腹が立っているのは、嫁が無神経にLINEに向こうのご両親と遊ぶ孫たちの様子を送ってくることです。おそらく嫁は、私と夫にも孫の様子を知らせようとそれだけのことなのかもしれません。でも私はあまりいい気がしません。そりゃあ向こうのご両親に孫たちがかわいがられているのはいいことですけど、私も夫も会いたいのに会えないわけだし…。私が嫁の立場なら向こうのご両親の写っていない孫だけの写真を送ります。そんな程度の気遣いができない嫁だとこれからの付き合い方に不安を感じます。
 
【A】
よくある話ですねぇ。孫はどちらの祖父母にとっても4分の1ずつの遺伝子を継いでいてくれる子孫で、進化論的には直系の血縁者として大事です。ほとんどの動物は孫が生まれるまで親が生存することがないので、孫を大切にする行動が進化に影響することはありません。
 
ところがヒトは自分の繁殖時期(受精、出産、子育て)の終了よりもはるかに長い生理的寿命を持ちます。だから祖父母が孫の子育てを応援することで孫の生存率が高まるのではないかという説があります。進化論から言えば、孫の両親、二組の祖父母四人が孫の子育てに参加することが生存率を高める有効な手段となり、ヒトの寿命が長くなったり進化に影響をもっているとも言われています。
 
なので、あなたの嫁の両親がよく孫を可愛がり、その証明のような写真を嫁が送ってくるのは「進化論的にヒトの寿命を長くしている効果がある」といくら言われても、あなたは納得できませんよね。「自分が嫁の立場なら向こうのご両親の写っていない孫だけの写真を送ります」とあなたは言い、「そんな程度の気遣いができない嫁だとこれからの付き合い方に不安を感じる」とまでおっしゃっています。
 
あなたが考える「気遣い」とは、「実際のところは私(嫁)の両親もこんなに、あなたたち(ご相談者とその夫)の孫でもある私たちの子どもを可愛がっています」ということであっても、それは隠しておくべきだと言うんですよね。それは自分達も会って可愛がりたいのに自分達はコロナで行けない、それなのに、そっちは近いからと言っていつも会っていて!という嫉妬以外の何ものでもありませんね。
 
かつて私の両親が向こうのご両親に「いつも孫を可愛がっていただいてありがとうございます」とお礼を言ったら、向こうのご両親から「いえいえ、あの子は私たちの孫でもありますから」とにこやかに言われてしまい、「あっ、そうだよなあ」と思わず失礼を詫びたと言っていました。発達心理学から言っても小さな子ども達が親だけでなく、祖父母に大切にされ、慈しんで育てられることは、後の人格形成に限りない可能性を育むことになります。知覚的にも身体的にも、たくさんの人に抱かれ、話しかけられた子どもが発達段階を順調にクリアし、他者とのコミュニケーション能力も高いことは幼児心理学の示す通りです。
 
どうか可愛いお孫さんのためにも、嫉妬の感情ではなく、嫁のご両親に感謝できるご自分になってくださることを願います。
第219回

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