男と女のQ&A【夫婦編】「“私は家政婦じゃない”と思う私の心に“その方が楽かも”という気持ちが…」

【Q】
やっと子育ても終盤を迎え、子育てから解放されて自分らしい生き方でも探そうかなあと思っています。子どもとの関係はすごく変わりました。でも変わってないことがあります。夫との関係です。男女の関係って、出逢ってから死ぬまでに3回変わる時があると思っていました。結婚する時、子育てが終わる時、夫が退職する時です。今は2番目、子育てが終わる時だと思うんです。「男は仕事、女は家庭」みたいな状況が一変すると思っていたんです。ところが夫にはそういう意識がないらしく、何も変わりません。帰ってくる時間も、帰ってきてからの態度も変わらない。帰って来るなり「風呂」「飯」「寝る」…。夫は私を家政婦くらいに思っているんでしょうか。「男と女」から「父と母」になり、もう一度「男と女」になるぞって思っていたのに、夫の意識は結婚してからずっと「雇い主と家政婦」で、もしかすると死ぬまで変わらないのかもしれないと思うようになりました。でも一番問題なのは、そういう夫ではなく「私は家政婦じゃない」と思いながら、心の中に「人生、その方が楽かも」っていう気持ちがある私なんです。
 
【A】
「雇い主と家政婦」という夫婦関係に異議を唱えながらも「その方が楽」と思っている自分が問題だときちんと「自分の問題点」を捉えているんですね。夫に「私はあなたの家政婦じゃない」と思ったり言ったりしながら、実は内心「それが楽」と思っている自分に向き合っていない人が多いのも現実です。
 
35年前に男女雇用機会均等法が成立し、社会で働くのには男も女も平等であると定められました。法律はできたものの実際は絵に描いたもちであって、女性が働いて男性と同じ待遇、同じ給料を得られる職種や職場はごくわずかです。男が外で働き、女が家で家事育児というパターンは大きく変わってはいません。そして家事育児という仕事にはあなたのいう「夫という雇い主」からの給与の支払いはなく、生活費を与えられるだけの「アンペイドワーク」(支払いのない仕事)と呼ばれています。家事育児だけでなく親の介護、しかも、自分の親は勿論、夫の親の介護まで妻に任せて当たり前という状態はまだ沢山あるのが実態です。
 
今年もジェンダーギャップ指数が156カ国中120番目という低い順序を示しています。これは先進国の中で最低レベルです。この指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され男女格差を測っています。男性に育児休暇が取れる制度があっても取る人はごくわずか、それも1週間とかいう短い休暇で本当にそれで子どもが育てられるわけでもありません。まあ、ないよりはいいのですが、女性は家事育児介護などに費やす時間は約8時間、それに比べて男性は約3時間というデータも出ています(子育て世代の平均・男女共同参画局)。しかも、これは女性も働いている場合の統計なので、あなたのように「主婦」として「家政婦」代わりに家事育児をなさっている場合、夫の家事育児時間は限りなく0に近く「めし、風呂、寝る」という生活になります。
 
2019年に韓国の女性作家が自身や姉のことをテーマに描いた「82年生まれ、キム・ジヨン」という小説は世界16カ国で翻訳、映画化もされ、大きな共感を呼びました。女性が家事育児介護の中で、心のバランスを失っていく様子が異例の大ベストセラーとなって社会現象をまき起こしています。
あなたが「その方が楽」な自分を責めず、少しずつですが男女差別のない社会づくりをすすめられたらいいですね。
第228回

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