男と女のQ&A【親子編】「スカートの方がかわいいよね」

【Q】
女子高2年生の娘がいます。娘の高校は式典の時などの正式な制服はワイシャツ、ベスト(ジャケットと同じ生地の)、ジャケット、スカートの組み合わせなんですけど、3年前から毛糸のベストやセーターも可、1年を通して式典以外は制服用のパンツも可になったんです。1年生の冬、娘はパンツで登校していました。登校の様子を見ていると、パンツは20人に1人くらいだったでしょうか。パンツの子はパンツの子で固まっている傾向もあるように思います。春になっても娘はパンツのままだったんですけど、ほとんどの子がスカートになったんです。男子はいないとはいえ、“パンツだと差別されたりしないのかなあ”と思った私は、つい「女子高生はスカートの方がかわいいよね」と言ってしまったんです。“あっ、まずい”って思ったんですけど、娘は口をきいてくれなくなり、夏のどんなに暑い日でもパンツで登校していました。ところが、秋の終わりくらいからスカートを履き出したと思ったら、今度は雪が降ってもスカートで通学してるんです。この冬はパンツの子はほとんど見かけなくはなったのですが。私が「寒くないの?」と声をかけても“ふん”という態度で聞こうともしません。娘と普通に口がきけず困っています。
 
【A】
「女子高生はスカートの方がかわいいよね」はご自分でも“あっ、まずい”と思ったんですよね。よくわかりましたね。「女子高生がパンツだと差別される?」というあなたの感覚の中に「女の子はスカートを履いておしとやかで可愛げにしていた方がいい」という「女性はこうあるべき」という固定概念があります。やっとお子さんの高校でも式典以外はパンツが可になり、1年生の冬からパンツで通学していたのに「それは可愛くない」というメッセージを送ってしまったんですね。
 
そもそもスカートの歴史をひもとけば、古代ヨーロッパでは性別を問わず男女共にスカートのような形状の衣服を着用していました。スコットランドに伝わる伝統的な衣装の「キルト」はタータンチェック柄が有名で、行事などの正装として用いられる男性用のスカートです。戦いに従事して乗馬や激しい動きが必要な男性にとってスカート状態の衣服は活動的でなく、農耕文化を持つアジア圏での労働者が着用していたパンツが欧州にも伝わり、その機能性から男性たちの支持を集め、男性の衣服として普及していったと言われています。
 
男子がパンツを履くようになったころは、女性が男性と同様の服装をすることが許されない風潮があり、中世以降はスカートの内側にフープを入れて大きく広げる立体的なデザインや装飾がなされ、女性が美しいスカートやドレスを身につけることは父親や夫の富や権力の象徴だったという歴史もあります。女性しかスカートを履かないのではなく、かつての女性はスカートしか履けなかったのです。
第二次世界大戦を機に、女性も活発に動けるパンツスタイルが増加していくことになりました。日本では農作業にモンペを履いていましたが、工場などでも作業のしやすさからズボン(英語のパンツに対して仏語のズボン)を履く女性が増えていきました。
女性がズボンを履く権利を求める運動は様々な男女平等の権利を求める運動と連動して進んできました。日本で女性が選挙権を獲得したのも女性がズボンを履けるようになった第二次政界大戦後のわずか80年ほど前のことです。
 
最近やっと、男性と同じようにかかとの低い靴が女性にも公式の場で許されつつあるのはご存じの通りです。そうは言ってもNHKニュースの天気予報コーナーをみると気象予報士の女性が動きづらいにもかかわらず、やたらと高いヒールの靴を履いているのが気になります。
 
Me Too運動でやっと手に入れたパンツスタイルをお子さんは意識するために着用していますよね。小学生の時から男子が先で女子があとの男女別名簿を使っている学校教育や相も変わらず時代遅れな男性・女性像を流し続けるメディアの中で、お子さんは古い既成概念の母親に抵抗を試みているのでしょう。もしかすると誰か気になる男の子でもできてスカートを履くようになったのかもしれませんが、お子さんの一人の人間としての生き方、主張を、あなたの古い感覚を押しつけるのではなく、見守ってあげてください。
第229回

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