男と女のQ&A【職場編】「私って付き合うに値しない女?」

【Q】
就職して6年です。学生時代には彼氏がいて「この人と結婚するのかなあ?」って思った時もあったんですけど、学生の時から付き合って結婚て、難しいんですよね。学生って遊んでるだけだから、本当の彼がどういう人なのか意外と知らない。卒業するまで付き合っていたんですけど、人生観みたいなものが違うことに気づいて別れました。就職してすぐに職場の男性と付き合ったんですけど、1度ホテルに行ったら、そのあとLINEしても既読にならなくなっちゃって…。職場で顔を合わせても付き合ってるっていう態度じゃないし…。1度ホテルに行って終わりってすごく嫌です。「私の何が嫌だったんだろう?やり方?匂い?遊ばれた?」とか色々考えちゃって、私って付き合うに値しない女なんだって思うようになりました。職場の同僚に、やたら彼氏自慢をする人がいて、なかなか予約の取れないレストランに行ったとか、高級リゾートホテルに行ったとか、いつも“綺麗だよ”って褒めてくれるとか、言うんです。そんな話を聞く度に「やっぱり私はダメな女なんだ」って、どこかへ消えちゃいたい気持ちになります。
 
【A】
あなたは「学生時代に彼がいて卒業するまで付き合っていた」のですが「人生観みたいなものが違うことに気づいて別れた」んですね。あなたは恋愛から結婚へ進み、人生の伴侶として暮らしていくのには「人生観」が一致していることが大切だと思ったんですよね。そのあなたの考えには大賛成です。一度切りの人生をどう生きるかの根本のところがズレていてはうまくいくはずはありませんから。
 
例えて言えば、夫婦や家族の時間や愛情を優先するか、経済、お金を優先するかで働き方も暮らし方も大きく変わってきますよね。ところでその人生観、価値観の点であなたにはいくつも偏見がありませんか?あなたは「学生って遊んでるだけだから、本当の彼がどういう人なのか意外と知らない」と言っています。発達心理学者のエリクソン(1902~1994)は人には「モラトリアム期間」がどうしても必要だと言っています。元々モラトリアムとは借金の返済を猶予する期間という法令用語ですが、エリクソンは心理社会的モラトリアムという青年期特有の発達課題(人間が健全で幸福な発達を遂げるために達成しておかなければならない課題)があると言っています。
 
それは丁度、大学生または卒業して社会に出ていく頃には終わっていて「学生が社会に出て一人前の大人になるための準備期間」とされています。それまでには真剣に「Who am I?」(私ってどんな人?)「Where am I going?」(どこへ行こうとしてるの?)のような問いかけを自らに課して悩むのです。そして何とか自我同一性(アイデンティティ)を確立して社会に出ていくわけです。そういう自分とは何か?どこへ向かおうとしているのか?という自己発見、自己確立の大切な期間を、見かけ上かもしれませんがあなたは「学生って遊んでるだけ」という偏見を持っています。
 
この時期に人は自分の思っている自分(理想自我)と現実の自分(現実自我)を自分の中で一致させてアイデンティティを確立させているはずです。もしかするとあなたはこの発達課題を学習してこなかったのかもしれませんね。学生時代の彼はモラトリアム期間を卒業してアイデンティティを確立したのに、あなたはその期間を「遊んでるだけ」ととらえていたために人生観がずれて別れた。職場で付き合った人とは「一度ホテルに行ったらLINEも既読にならない」と言って「自分のSEXのやり方?匂い?遊ばれた?」と言い、同僚を羨ましがって「ダメな女、消えたい」と悩んでいます。どうか「Who am I?私って?」ともう一度アイデンティティ(自我同一性)の確立を試してみてください。
第251回

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