Q.今月で30歳。これまでいい恋愛もしてきたし、25歳の時にはもうちょっとで結婚というところまでいったんです。でも結局、踏み切れませんでした。彼が25歳も年上だったからです。父親と同世代。父の猛反対に遭いました。私は彼を愛していたし、年の差なんて関係ないと思っていました。でも、結婚に踏み切れなかったのは、父のせいではなく私のせいなんです。出産して子どもが成人したとき彼は70歳。様々な困難もあるだろうし、そのとき彼はいないかもしれない。「それって幸せな家庭?」って躊躇する自分がいたんです。その後、彼とは別れて新たな恋愛をしました。なのに、また相手は22歳も年上。彼と別れたのはなんだったの?と、気持ちが整理できません。
A.マザコンの逆バージョンですね。100年程前の精神分析医フロイトは子どもたちが生涯ではじめて恋心を感じるのは女の子なら父親、男の子なら母親という心理分析をしています。ギリシャ神話で母と知らずに結婚してしまう王が登場し、その名「オイディプス」からとって「エディプスコンプレックス」と名付けられたのが「マザコン」の原点です。
幼い子どもたちが母や父に「大きくなったら結婚してあげる」と言うのはよくある話。思春期になるとそんなことすっかり忘れてそれぞれ似合いの相手と恋愛、結婚することになるわけですが、あなたのように父親への思慕が思春期以降も続くケースもあります。父親が娘を溺愛したり、幼くして大好きだった父親と別れたような場合、無意識に父親のような年齢の男性に恋をしてしまいます。「種の保存」という生物の根本から考えれば、女性は排卵があり受精卵を子宮で育てて出産できる年齢、男性は卵子を受精させる能力のある年齢の恋愛や結婚が望ましいわけです。けれども、それは人という「種」を継続し、自己のDNAを未来に残すという目的に人生最大の価値を置けばの話です。だからあなたも生まれた子どもが成人する前に父親がいなくなったら?と悩んでいるわけですね。他の動植物と人間の違いは実はこの一点にあります。即ち、「ヒト」は「種」や「DNA」の保存のためだけに恋をするのではないということです。
あなたにとっては父親の年齢と似通った男性を好きになるのが自分であり、自分のくせ、又は価値観だということ。幼少期に発達課題をクリアできなかったと考えられますが、あなたは他の動植物と違い「種」や「DNA」を残さないという選択肢もある「ヒト科ヒト」なので、そういう恋愛や人生の選択もありとお考えになってもいいと思います。ただ今回の恋愛で妊娠、出産、子育てのことで躊躇されていますから、この機会に父上との幼少期から現在に至るまでの関係性を整理されてみてはいかがでしょう。父親からの溺愛だけではなく、愛されたかった父親から思っていたような愛され方をしなかった場合にもこうしたファザコンが生じることもあります。年の差の大きい恋人や夫婦のすべてがファザコンというわけではないので、二度の恋愛がたまたまそのパターンだったという程度のとらえ方をしてみてはいかがですか。
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