男と女のQ&A【職場編】「トランスジェンダーの彼女のトイレは女性用?」

 
【Q】
うちの職場にトランスジェンダーで、男性なのに女性という人がいるんです。私も、私の周りも受け入れていて、仲良くしています。仕事上のことはもちろん、一緒にお茶したり、食事をしたり…。普通に女子会のメンバーなんですけど、社員旅行とかトイレの問題が難しくて…。社員旅行は、幹事さんが気を遣って、和室の大部屋ではなく、シングルルームとかツインルームとかがあるホテルを選んで、彼女(彼)にはシングルルームに宿泊してもらうようにしているんですけど、会社のトイレは男性用、女性用だけで、多目的トイレはないので、彼女の気持ちを考えて一応女性用っていうことになっています。でも、どうしても抵抗があって、私は彼女がトイレを使うのを待って、出てきたら使うようにしています。申し訳ないっていう気持ちもありますけれど、同僚に訊くとみんな同じようにしているみたいで…。彼女も気にしていて何となく気まずい感じが残っているんです。
 
【A】
5月9日、朝日新聞朝刊の埼玉版に『「女性トイレ廃止」ネットで誤情報 知事「まったく事実ではない」』という見出しの記事が掲載されました。内容は、県が掲げる性の多様性に配慮した「オールジェンダートイレ」の設置方針について、ネット上に「女性トイレを廃止・減少させる」という誤った情報が流れているとして、県が打ち消しに動いているというものです。
 
大野知事は「性の多様性を尊重した社会づくり条例」ができたことを受け、男性用、女性用とは別に、誰でも使用できる「オールジェンダートイレ」などの設置を検討したり、「多目的トイレ」に「オールジェンダートイレ」と新たに表示したりすると説明していました。そのあたりのことが「女性トイレを廃止・減少させる」とか「民間を含めたあらゆる施設にオールジェンダートイレの設置を義務づける」という誤った情報になって流れてしまい、多数の問い合わせがあったそうです。
 
以前、戸籍上は男性で女性として暮らす性同一性障害の経済産業省職員が「女性トイレの使用制限は差別だ」として国を相手取った訴訟の控訴審判決が東京高裁でありました。判決では使用制限した同省の対応は違法ではないとして、違法性を認めた東京地裁の一審判決を覆しました。原告の職員は声を詰まらせながら「職場で正当に扱われないことがある。自認する性で勤務できることが当たり前になってほしい」と話したそうです。
 
10年前には、戸籍上、身体上性別変更をしていないトランスジェンダーへの対応は未知のものとして官庁では女性用トイレの使用制限をしたとのことで、「他の職員が持つ性的不安を考慮」(トランスジェンダーを装った男性の侵入などを想定)と理由を述べています。社内へ入ること自体を制限しやすい民間企業では、性同一性障害への先進的な取り組みがしやすく、あなたの会社ではかなり周りが配慮して、トイレも女性用を使っているということですが、「申し訳ないという気持ち」もありながら、ご自分も同僚も「彼女が出てきたら使うようにして」いて、「彼女も気にしている」「何となく気まずい感じ」と居心地の悪さを訴えています。
 
世界では、2001年オランダで、法律上の性別が同じ者同士の結婚が法的に認められ、2023年現在、34の国や地域で同性婚が可能になっていますが、日本での実現はほど遠い状況です。
 
そういう中であなたは、トイレの使用を「彼女が使うのを待って、出てきたら使う」として、自分たちに「気まずさ」や「申し訳なさ」を感じています。その「気持ち」がトランスジェンダー問題で世界に遅れている日本の政治や文化を解決していく糸口や原動力になるはずです。トランスジェンダーの方との信頼関係をさらに深めることも大切ですね。
第256回

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