男と女のQ&A【子親編】「老人ホームは女性ばかり・・・」

 

 
【Q】
一昨年母が亡くなり、88歳になる父はヘルパーさんと私と妹が協力して、何とか一人暮らしをしています。食事の世話さえすれば、生活できていたのですが、ここのところ足腰が弱り、目と耳も悪くなってきて、食事の世話だけでは、厳しい状況になってきました。私の家に来ることも勧めてはみたのですが、「婿のいる娘の家など行けるか」の一点張りです。男の兄弟はいませんから、子どもの世話にはならないということですよね。
仕方なく介護付き老人ホームを勧めてみたところ、「そうしたい」ということでした。どんな施設があるのかも知らず、父を入居させようとすると施設選びも大変です。どういう人たちが入居しているかで施設の雰囲気がまるで違うんです。最初に見学に行ったところは、ほとんどの人が認知症でした。認知症でない父には無理と思い、その後は「自立・要支援・要介護でも介護度の低い人」が入居している施設に絞って探し、何カ所かをピックアップしたんです。父も連れて見学に行ったところ、入居者のほとんどが女性で男性は見当たりません。数十人の女性の中に数人男性はいるらしいのですが、何カ所か見学に行っても1人で食事を摂れない男性を2人見かけただけでした。父も不安になってしまい、「俺は一人でいい」と言い出し、結局振り出しです。どうやって父を説得するか困っています。
 
【A】
女性の平均寿命が長いこともあり、ほとんどの老人ホームでは男性に比べて女性の入居者の割合が高くなっています。ホームにより異なりますが、どの老人ホームでも男女比が「2:8」~「3:7」くらいの割合で女性入居者が多いというという統計が厚生労働省「介護サービス施設、事業所調査の概況」より伺えます。このような差が生じる要因としては「男女の平均寿命の違い」「夫の両親や夫を看取った後に妻が入居することが多い」という理由の他、「老人ホームのようなところに世話になりたくない」という男性のプライドであったり、「他の入居者に合わせて生活する不自由さが嫌だ」という理由もあるようです。
 
あなたのお父様も施設見学をしてみたものの、入居者のほとんどが女性で男性は数十人の女性の中に数人、しかも1人では食事も摂れない男性だったとのことで「俺は1人でいい」と振り出しに戻ってしまいました。「どうやって父を説得するか困って」のご相談です。
 
結論を申し上げると、このような場合、「説得」は無理です。ではどうするかというと、お父様が説得されて施設に入居するのではなく、「納得」して入居するのを待つしかありません。子どもや高齢者の世話は「女性」という既成概念の文化の中で、2人いる娘の家には「他人で男性である婿がいるから、そんなところへ行けるものか!」というプライドの高さ、亡くなられたお母様はご苦労されたことでしょう。
 
さて、具体的には食事の世話は姉妹で協力してやっていたけれど、足腰、目、耳も弱り一人暮らしは厳しい状況とのこと。それでも見学の後、「施設は嫌、一人暮らしでいい」と振り出しに戻ったわけです。あなたと妹さんにも家庭があるのですから、もし今までのようにお父様がどうしても一人暮らしがいいとおっしゃるなら、今まで以上のお父様への介護は無理ですので、ケアマネージャーさんに相談してヘルパーさんの来てくれる日数を増やすようにして、それをお父様に承知してもらうことが必要です。
そんな風にして、このまま2~3カ月、場合によっては半年くらいになるかもしれませんが、しばらく様子を見てください。負担が増えることがあったり、負担を減らそうとするとお父様の安否が気になることもあるでしょうが、できるだけ介護の質や量を変えずに我慢してください。
 
いずれお父様の方から「一人では無理」と納得して、どこか施設へと言い出すことでしょう。その前にもう一度、「あなたの家に」と勧めてみるのもいいかと思います。今は施設も入居者の生活の質を落とさないよう様々な工夫をしていて、外出が自由だったり、他の入居者と顔を合わさず過ごせたり、性別に関係なく気の合う入居者同士で会話ができたりします。今は「説得」より「納得」される日を待ちましょう。
第265回

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