【職場編】「これってセクハラ? それとも当然のお付き合い?」

【Q】
大学を卒業して、今の会社に就職して3年です。私の部署は、私を含め女性が3人、男性が8人で、入社以来お世話になった上司が、今春異動になり、新しい上司の下で働くようになりました。以前の上司とは、食事に行ったり、飲みに行ったりしましたが、常に4~5人のグループでした。ところが、今度の上司は、二人で行きたがります。他の人たちとの関わり方を見ていても、男性同士二人で出かけたりもしているようなので、そういうやり方の人なのかなあとも思うのですが、なんだか服装が軽装になったとたんに誘われ出したような気がして、とても嫌な気分です。「私って意識しすぎ?」なんて思うこともあり、そう考えると、上司の対応以上に自分が嫌になったりもします。上司は36歳、既婚者で、お子さんが二人。社内では将来を有望視されている人です。

【A】
これをお読みになった読者の皆さんの中で「男性上司」の立場におられる方は、「なんだよそれ?! たまにはおごってやって、他の人がいたら言えないような愚痴や悩みも聞いてやろうとしてるのに“セクハラ”?! 冗談じゃないよ!」とお思いになったでしょうか?
あるいは、「“服装が軽装になったとたん、誘われ出した?” 何言ってんだよ、こいつ! その二の腕で? そのペシャンコな胸で? ハッ?!」みたいに思いました? それとも、「図星!」って感じましたか?
いずれにしても、これは「アウト!」です。
時間外や休日に「女性の部下」を飲食やカラオケ、ボーリングなど、とにかく二人きりで誘った場合、相手の女性が「セクハラ」(セクシュアル・ハラスメント)と感じれば、「セクハラ」になってしまいますから要注意!
もちろん、誘われた女性の側が、その行為を喜んで受け入れているように見えても、実は「嫌なのに耐えている」なんてことだってありますからね。
「“いやよ、いやよ”も“好き”のうち」
なんて言葉がありましたけれど、今、男性上司が考えなければいけないのは、むしろ、
「“いいわ、いいわ”も“いや”のうち」
とでもいったところでしょうか。
さて、ご相談のあなた、新しい上司は「男性同士でも二人で」出かけたりしているから「これが彼のやり方?」と思ってあげようと無理をしていますよね?!
異性のあなた(これが欧米なら同性でもというところでしょう)が「二人で行きたがる」と感じるような誘い方は言語道断。一昔、二昔前ならいざ知らず、今の世の中、ご自分の心に素直に従って、「No thank you!」とおっしゃっていいのです。
ましてや、「軽装になったとたん」と感じるのであれば、それもそのあなたの「感じ」を大事にしてください。いつまでも、母や祖母たちの時代のように「女であることで自分の感情(行きたくない)や自分の感覚(薄着になったとたん)」を押し殺したり、見て見ぬふりをするのはやめましょう。あなたは上司のことを「既婚。お子さん二人。将来有望(視)」とおっしゃって、その方に「下心があるはずがない」とか、「好意を無視しては失礼」とか考えていますね? 外国映画に出てくるキャリアウーマンのように、かっこいい台詞は吐けなくても、とりあえず「ありがとうございます。また、皆さんとご一緒にでも、お誘いくだされば伺わせていただきます」とかなんとか、やんわりと断ってみてはどうでしょうか。
日本の文化の中では、男性上司が女性の部下を誘ったら、受けて当然という意識が長い間ありました。自分の心に従って「嫌」ということは「女らしくない」とか「かわいくない女」という評価を受けてきました。そして、挙げ句の果ては、会社をやめざるを得なくなったり、うつ病を発症したりしてきたのです。もう、そういうことはやめましょう。
そして、最後に男性の方々へ!
「“はいはい”と黙ってついてきたのに、なんで俺が“セクハラ”って訴えられなきゃなんないの?!」とショックを受ける前に、ご用心、ご用心! まずしっかり、女性を対等な一人の人間として扱うトレーニングをなさってくださいね!

※セクハラ
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(改正男女雇用機会均等法)。セクハラの構成要件としては、「相手の意に反する性的な言動がある」「職場の労働条件について不利益を受けるか、就業環境が害される」こと。

(第1回)

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