【恋愛編】「妹が私の恋敵?」

【Q】
彼とは付き合い始めて3年になります。会社の同僚で、最初はグループで飲みに行ったりしていましたが、半年くらい経ったころ彼から誘われ、お付き合いを始めました。プロポーズはまだだけど結婚は既定路線です。ところが、先日彼の家を訪ねると、洗面所に青とピンクの歯ブラシが並んで置いてあったんです。ショックでした。その時は何も言わず、数日後「この前洗面所に歯ブラシが2本あったけど…」と言ってみました。そしたら「妹だよ」とあっけらかんと言うんです。その時思い出したんです。去年の秋皆で飲みに行こうって相談してた時、「今日は妹の誕生日で、一緒に食事することになってるから」って彼がみんなと飲みに行かなかったことがあったって。彼に妹を紹介されて、一緒に食事に行った時も、3人で歩いていると、急に彼の妹が私と彼の間に入って、彼の腕に捉まったりしたんです。その時は仲のいい兄妹でうらやましいと思ったんですけど、考えてみると、それって変ですよね。結婚を真剣に考えているだけに、そんな彼の態度が不安です。

【A】
不安ですよねぇ。大いに不安になっていいと思いますよ。「彼に別の女性がいた」というのと違って、「妹のピンクの歯ブラシが並んで置いてある」とは・・・。まだ「浮気発覚!」の方が対処が楽だったかもしれませんね。彼は妹をまるで恋人か妻のように扱っていますよね。

このように兄妹・姉弟を恋人のように思う感情を、シスターコンプレックス(シスコン)、ブラザーコンプレックス(ブラコン)などと呼んでいる人もいます。元はドイツで活躍したユダヤ人の精神科医フロイト(1856-1939)が100年ほど前に唱えたコンプレックス理論から派生しています。フロイトは、4、5歳の子どもが異性親を好きになる傾向を発見し、それをギリシャ神話になぞらえて『エディプス感情』と名付けました。そして、その感情がいつまでも続くようであると、それは『エディプスコンプレックス』という「心のくせ」、「心の偏り」となり、その感情をきちんと意識しないと状況に流されがちになると考えたのです。

あなたの彼の場合は、「母と息子」ではなく、「兄と妹」という変形版というところでしょうか。実際、ヨーロッパでは、紀元前950年程昔の古代エジプト人「オシリス王」の妹「イシス」が、妹でもあり妻でもあったと記されています。日本でも古事記や万葉集には、「吾妹子」(わぎもこ)の記述が度々登場し、大昔は兄と妹の恋愛や結婚は珍しいものでもなかったことを教えてくれます。
人口が少なく異性の出会いも少なかった昔は、種(しゅ)の保存のためには手近な兄や妹、姉や弟で間に合わせよう(あまりいい表現ではありませんが)としたり、幼少期から一緒に暮らしていて安心安全ということもあったりしたのでしょう。しかし、時代が経つと血族結婚は遺伝子の組み合わせに問題が多いらしいことがわかり、三親等内の婚姻を禁止するようになりました。

このように古い歴史を紐解くと、あなたのライバルは手強い相手のようです。とは言っても、あなたの友人知人で逆に「お兄ちゃんなんて全く好みと違う!」とか「妹の顔も見たくない!」という兄妹もいますよね。それは、自分の子孫をより多く残すためには、遺伝的に自分とは遠い(お互いの欠点を補い合うような)遺伝子の結合を求めようとする本能に近いものが働いているからと考えられます。現代の世では特殊な例を除いて、母と息子、兄と妹などの関係は、それぞれに適切なパートナーができることによって自然に消滅していきます。

さて、あなたの彼の場合、あなたと付き合って3年で、まだこの様子だとかなり根の深い感情が残っているように思います。そろそろあなたの気持ちをはっきり話してみてはいかがでしょうか? 不安・不審な気持ちを残しての結婚は、お勧めできません。この際、いい子になろうとせず、不快なものは不快とおっしゃる勇気を持ちましょう。そこから何かが開けるはずです。結婚はあなたの気持ちを彼がどう受け止めるかを見てからでも遅くはないですよね。

第2回

ページ上部へ