【夫婦編】「私が本気で悩んでいるのに…」

【Q】
結婚して5年、来春幼稚園に上がる息子がいます。すでに小学校や幼稚園に子どもを通わせているお母さんたちと話をすると、皆「幼稚園選びが大事」と言います。人気のある幼稚園は並んで申込みをしないと入れないとも聞くので、早めに決めようと、私なりに調べたり、幼稚園に行ってみたりもしました。夫に、「私は××幼稚園か、××幼稚園のどっちかがいいと思うんだけど・・・?」と聞いたのですが、夫の答えは「ああ。どっちでもいんじゃないか」。
私が本気で悩んでいるのに何なの?!
いつもそんな風なら、腹も立たないと思うんです。でも、いつも子どものしつけについては、細かいし、うるさいんです。例えば子どもの片付け方が悪いと子どもに延々お説教するし、私にも「お前がもっとちゃんとしつけなくちゃダメだろ」と文句を言います。きっと、幼稚園選びがうまくいったら「俺が決めた」、うまくいかなかったら「お前が決めた」って言うんです。

【A】
なるほど。ご相談者のあなた、実はこの「幼稚園選び事件」以外にも最近夫に腹が立つことが増えていませんか?
「私が本気で悩んでいる」幼稚園選びには「どっちでも」と答えるくせに、他のことでは「細かいし、うるさい」、子どものしつけでは「お前がもっとちゃんとやれ」みたいな・・・。結果がうまくいけば「俺の手柄」、失敗すれば「お前のせい」。このご相談への私の率直な意見としましては、「夫の選び方を間違えましたね。選び直してみてはいかがでしょう」と申し上げたいところではありますが、実際選び直したとしても、またまた、こういう男性に当たる確率が大変高い。要するに、憲法では「男女平等」と謳っているけれど、実際の世の中は、家庭の縁の下のさらに下の準備は、女性である妻の役目。その結果が成功すれば一家の主である夫の面目躍如。「良妻賢母」とか「三歩下がって…」とかいう言葉は、100年も前の言葉かと思いきや、言葉自体はほんとんど死語状態になっているにもかかわらず、その精神は脈々と生きている・・・。

女性が「本気で悩んでいる」と聞いて、「はっ? 女も悩むんだぁ?」とまでは言わないまでも、男が本気で悩む時というのは、夏目漱石の「文芸は男子一生の事業とするに足らざる乎」とか、「天下分け目の××」とかのように、「一生」であったり、「天下」であったり…。それに比べて、女の悩みというのは「小さい、小さい」と思っている男の方々、たくさんいますよね?(もっとも、このQ&Aの読者の男性諸氏は、そうは考えていないことと思いますが(笑))

さて、鳥の仲間は、つがいで子育てをする種が多いんです。これは、ヒナが孵ったとき、体にほとんど毛がなく、飛べるようになるまでに日数がかかるので、雌だけでは餌を与えながら(餌の確保のために巣を離れる)、しかも外敵からヒナを守るということができないからです。ところが鳥以外の動物を見ると、雄が雌に協力して子育てをする種は、ほんのわずかしかいません。私たちの祖先と言われる大型類人猿の仲間たち、チンパンジーやボノボも、ほぼ雌だけが必死で小さな赤ちゃんを育てます。赤ちゃんは割とすぐ、自分で走ったり、木に登って実を取ったりできるようになりますから、雄の協力はさほど必要ないということなのでしょう。

そこで、人間はどうですか?
ご相談者のお子さんは来春幼稚園とのことですから、3歳あるいは4歳。人間の赤ちゃんは生まれて数年は、走れませんし、木登りもできません。一人で食事をすることもできませんよね。3つ、4つになるとどうですか? まあ、充分にとはいえませんが、とりあえず箸やスプーンを持って一人で食べられるレベルにはなります。見方を逆にすれば、その頃までは、夫も協力しないと妻がしんどい。人間は、そんな動物です。ですから、その頃までは、一緒に育てるという習慣がある。「どっちでも」というあなたの夫の答えの中には、「そろそろ、俺は子育てから離脱しも大丈夫だよな」という無意識の意識があったのかもしれませんね。

「人」という種は、子育てが終わった後も、夫婦が愛し合い、豊かに生きることのできる唯一の種ですから、あなたも夫とご自身の気持ちや意見を率直に話し合ってみてください。そして、お子さんも男の子のようですから、お子さんには「男の子でしょ!」という育て方はやめましょうね。「子育てに協力しない夫の再生産」、つまり、今あなたが悩んでいることと全く同じ悩みを、あなたの息子の相手が感じることになってしまいますから!

第8回

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