【親子編】「息子には厳しいのに娘には劇甘な夫」

【Q】
高校1年の息子と中学2年の娘がいます。夫はサラリーマンで、どちらかというと厳格な方だと思います。夫は息子には厳しく、怒鳴ったり、叩いたりはしないものの、かなり厳しい口調で叱ることが良くあります。私はそれを夫の息子に対する期待の現れと見ているんですが・・・。
その反面、娘にはとても甘い父親なんです。少し前に娘が不登校気味になりました。その時の夫の対応といったら、「学校で嫌なことがあったんなら俺が学校に怒鳴り込んでやる」と意気込んだかと思うと「どこか具合でも悪いのか? 明日病院に連れて行ってやるからな」と言って、会社を休んで娘を病院に連れて行ったり・・・。私は、そんな夫の態度が娘を不登校気味にしているし、今後の娘の人生にも良くないと思うので、「娘に甘すぎるんじゃない?」と夫に話をしたんですが、「娘をかわいがって何が悪い?!」と取り合ってももらえません。

【A】
「エディプス・コンプレックス」という言葉を聞いたことがありますか?
精神分析理論の創始者であるジークムント・フロイトが研究していたコンプレックス(心のくせ、心の偏り)の一つです。フロイトは、主要なコンプレックスに「エディプスコンプレックス」「カインコンプレックス」「ナーシズム」「劣等コンプレックス」「退行コンプレックス」をあげていますが、これらのコンプレックスは、誰にでも存在するものだと言っています。

さて、4~5歳くらいの子どもが異性親を好きになる傾向を「父親だとは知らずに父を殺し、母親だと知らずに母と婚姻した」ギリシャ神話のオイデプス王の話(興味のある方はぜひ調べてみてください)を元に「エディプス感情」と言います。このエディプス感情は、5、6歳のころをピークに一旦は解消されますが、思春期に再び現れます。そのとき、この感情をうまく制御できるかが、子どもたちがその後の自然な恋愛や性をまっすぐに受け入れたり、喜びとして感じたりすることができるかの分かれ道になります。

要するに、いつまでも父親は娘に、母親は息子に甘くしていると、子どもたちの自立を阻むことになるばかりか、娘は母親を、息子は父親を、敵対視あるいはライバル視して、家庭が混乱する元になります。もしかすると、ご相談のあなたは、息子に厳しい夫に不満で、そのことがあなたを息子に甘い母親にしていませんか。
あなたの夫である娘さんの父親は、「娘をかわいがって何が悪い?!」と居直っています。このまま父親は娘を、母親は息子をかわいがりすぎると、言い換えれば「恋人視」し続けると、娘さん、息子さんは、健康な形での異性との恋愛や性を享受することができず、不幸な人生を送ることになります。

人はある時期、成長の発達段階で異性親に好意を寄せたり、あるいはその反動から異性親を毛嫌いしたりすることがあります。その時期を子どもの発達段階と捉え、夫婦は微笑ましく見守りつつ、バランスよく娘や息子を愛したり、叱ったりして、うまく乗り切ることが大切です。

父親が「学校に怒鳴り込んでやる」と意気込んだり、会社を休んで病院に連れて行くのではなく、ごく普通に「何があったのか、お父さんに話してごらん」とでも声をかけ、それ以上はそっとしておいてあげてください。と同時にあなたも、息子さんに「~食べる?」とか「~行く?」とか「~着る?」なんてやっていないか点検してみてくださいね。
ちなみに「カインコンプレックス」とは、親の愛を独占しようと兄弟姉妹が争い合う心理、「ナーシズム」とは、うぬぼれや自己中心的な傾向、「劣等コンプレックス」とは、威張ったり、逆に自信を喪失して低姿勢になったり・・・、「退行コンプレックス」とは、いくつになっても幼児性が抜けず人に頼る傾向のことです。

誰もが持っているコンプレックス、成長とともに少しずつ修正して、バランスのとれた人間になれるといいですね。

第9回

ページ上部へ