【親子編】「6年生にもなって“ママ、一緒に寝よっ!”という息子」

【Q】
37歳、専業主婦です。小学6年生の息子と小学3年生の娘がいます。夫は商社勤めで、毎朝7時過ぎには家を出て、夜10時前に帰宅することはほとんどありません。その分、休みの日には子どもたちの面倒もよく見てくれます。どちらかというと甘い父親です。決して子どもたちを乱暴には扱いませんし、暴力を振るうこともありません。娘は他のお子さんと比べやや幼い感じで、1年生といっても通るくらいなので、小さな子どものようにかわいがっているように思います。困っているのは息子のことなんですが、6年生にもなって、私がお風呂に入っているといきなり入ってきたり、「ママ、一緒に寝よっ!」と私をベッドに誘ったりするんです。やめるタイミングも見つからず、これまで一緒にお風呂に入ることも多かったですし、幼い頃からよく添い寝をしていたので、一緒に寝ることにもそれほどの違和感はありません。そうは言ってもさすがに6年生にもなると身体は大人のようですし、手や足を絡めてくるようなことがあると私の方がドキッとしてしまうこともあります。どのタイミングで、どう話して、どうやめるのか、とても困っています。

【A】
人間には急成長期が2度あります。生まれてから2歳になるまでの間と思春期の2度です。人間以外の動物は生まれるとすぐに急速に成長し、あとは徐々に成長して大人になります。ところが人間だけは生後2年目くらいまで急に成長した後、成長のスピードが落ち、6歳から12、3歳くらいまではゆっくりゆっくりとしか成長しません。そして、12、3歳ころから18歳ころまでの思春期と呼ばれる時期にもう一度急激な成長をするのです。この時期の成長を「思春期スパート」と呼んだりします。

2歳までと思春期に2度急激に成長して、その間は成長がゆっくりになるというこの人間の成長にだけ見られる特徴は「人間にだけ長くて安定した子ども時代がある」ということを表しています。すなわち、この長い安定した子ども時代に様々な課題や危機にぶつかりながら、それを解決することで一歩一歩「人間性」を獲得していくのです。

あなたの息子さんは今、その人間だけの「長い安定した子ども時代から思春期に移行する時期」なのです。「思春期」は、はっきりした基準はありませんが、概ね12、3歳くらいから始まるとされています。この時期の一番はっきりとした成長は、生殖可能な身体を持つ生理的成熟を迎えるということで、女児は初潮を、男児は精通を体験します。この身体的変化は、内面の心理的変化にも大きな影響を及ぼし、自分と他者との違いに気づいたり、自分を独自の存在であると感じたりします。また、そのため他者と比べて劣等感や孤独感に悩んだりするのもこの時期です。自分の心身の変化と環境の変化を調整しながら適応しなければならず、たくさんのエネルギーを必要とします。その時、あなたのお子さんのように不安になって、お母さんのそばにいたいと思うのです。お母さんは「6年生にもなって」とか「身体は大きいくせに」とか感じたり、言ったり、からかったりせず、心身の急激な変化に戸惑っているお子さんの内面を理解し、そのままそっと受け入れてあげてください。

間もなくお子さん自身が自分の心身の変化に納得すると、お母さんは「あらっ、あの時は何だったの?!」と拍子抜けがするくらい母親から離れていくものです。ここで、無理矢理離そうとすると、かえってこの時期を長引かせて、いわゆるマザコン(マザーコンプレックス)になることがあります。

この時期が過ぎると、青年期の発達課題である「Who am I?」(私って誰?)「Where am I going?」(どこへ行こうとしてるの?)というような「自分という存在」について自ら問いかけることになります。アイデンティティの確立と言われるものです。
この人生最大の難問を解決しなければならない時を予感した子どもたちが、不安に襲われるのは、多少の表現の違いはあっても、人間なら誰しも当然のことと共感的態度で接し、成長の一段階と受け止めてあげてください。

できれば朝早く出社し、夜遅く帰宅する父親の出番が休日以外にもあるとお子さんの母親離れが早くなると思いますが…。子どもがそういう時期にさしかかった時、父親はちょうど働き盛りということもあり、なかなか難しいとは思いますが、努力の姿勢を見せるだけでもいいと思います。あなたの気持ちはずっと楽になるはずですよ。

第19回

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