【子親編】「義母の視線が怖い」

【Q】
夫の両親は、私から見るとかなり仲のいい夫婦に見えます。私の両親は、ほとんど会話もないような関係で、ちょっとした買い物でも、何泊かの旅行でもそれぞれ出かけることが多く、ほとんど一緒にいるのを見たことがありません。それに比べ、義父と義母は、いつも一緒。家にいる時もよく話をするし、よく一緒に温泉に出かけたりもします。でも、私が夫の実家に行くと、義父にお酌をせがまれたり、話し相手をさせられたり・・・。私はそのこと自体苦にはなりませんが、そんな風に義父の相手をしている時の義母の目が怖くて、実家に行きづらくなってしまいました。もちろん、義母も私によくしてくれるんです。でも、あの目は絶対敵意を感じている目だと思います。義父と義母には仲良くしていてほしいし、私も義理の両親どちらとも仲良くしたいし・・・。どのように接したらいいでしょう。

【A】
あなたは「義父にお酌をせがまれたり、話し相手をさせられたり・・・そのこと自体は苦にならない」とおっしゃっていますが、すでにその言葉の中に、無意識に「苦になりつつある」という気持ちが表現されています。義父にお酒をついであげる行動を「お酌をする」という言い方をし、しかもそれを「せがまれる」と表現していいることに、自分では気づいていないけれど、違和感を持っていることが示されています。

「お酌」という行為自体、日本独特のもので下位の者がへりくだって上位の者にお酒を勧めることですし、その上「せがまれる」という言葉は「嫌なんだけけれど、しつこく頼まれるから仕方なく…」というニュアンスが充分に含まれています。「話し相手をさせられる」も同様に、「せがまれて」「仕方なしに」という意味ですよね。

こんな些細な言葉の中に、普段は意識されていない人間の精神活動が出ることがあります。私たちは、日常自分が行動や思考、そして感情の動きなどの精神活動について、自分で確かに分かっていると感じていますが、実は無意識下にある種々の気持ちに突き動かされていると言われています。

100年ほど前に活躍した精神科医フロイトは、1900年に「夢判断」という本の中で、「恐れや不快感、苦痛などを無意識の世界に閉じ込めていると夢や言い間違いを通してそれが出る」というようなことを言っています。
あなたの場合は、言い間違いではないけれど、意識の世界にあった強い感情的なこだわりを無意識の世界に閉じ込めて、義父にお酌をしたり、話し相手になっていたりしたのでしょう。義母の視線が嫉妬の敵意の視線に見えたのも、たぶんそのためではないでしょうか。

あなた自身の中に、義父が自分を「女」として好意を持ち、義母はその私をライバル視している、というシナリオが出来上がってはいませんか。
ご相談の中には、あなたの夫のことが何も出てきませんが、父親と息子は同じタイプの女性に好意を感じる例がよくあり、おそらくあなたはお義父様に気に入られているのでしょう。ただ、今あなたには、お義父様との関係が、無意識に負担になっているようですし、むしろあなたの方がお義母様に敵意を持っていることも考えられますので、お義父様のお酌やお話し相手はほどほどにして、お義母様のお手伝いをしたり、お話し相手になってあげられるような方向に持っていけたらいいですね。

第25回

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