【職場編】「飲んでて泣いちゃう男って・・・」

【Q】
最近の男って軟弱ですよね! 入社3年目の同期の連中で飲みに行ったんです。男3女2で。1時間半くらい飲んだかなあ・・・。そしたら急に、男の子のうちの一人が、あえてそう言いますけど、ほんとに「男の子」なんです。だって、「僕にはこの会社は向いてない」なんて言って、急に泣き出しちゃうんですよ。他の二人も同調っていうか、同情っていうか、泣きはしないけれど、なんか愚痴っぽくなって、文句ばっかり言って・・・。男のくせに情けないって感じ。でも、それで終わらなかったんです。翌日、その泣いちゃった男の子が私のところに来て、「おまえの前だと本当の自分が出せるんだよ。付き合ってくれないか」って言うんです。あの涙って私と付き合うための演技だったの? まさかね、5人だったんですよ。まあ、悪い奴だとは思わないけれど、そんな男って情けないですよね。

【A】
「男の子」に泣かれるとこっちはどうしたらいいか、ほんと困っちゃいますよね。私もあるある、そういう体験。
「男のくせに情けない」とあなたが言っているように、昔から男の子は「男の子でしょ、泣くんじゃありません!」ってしつけられる。男の子も大変だと思いませんか。転んで泣いたって、悔しくって泣いたって「男の子でしょ!」って怒られるんですから、子どもにとってはわけがわからない。男の子だって痛いものは痛いし、悔しいものは悔しいですもんね。男が泣いてもいいのは、せいぜい親が死んだ時くらい。それも誰もいないところで、何粒か涙を流すくらいでやめないと「女々しい奴」と言われる。男は泣かないものだから「男泣き」という言葉はあっても、女は泣くものだから「女泣き」という言葉はない。男は人前では泣かない、それが男だと私たちは思い込んで育ったし、育てられた。だからあなたも飲んで愚痴って泣いた男って「情けない」と思うし、しかも一人でこっそり泣くんじゃなくて5人もの人前で泣くなんて!と思ったんですよね。その上、次の日「付き合って」と言われてもって感じですよね。

「演技?」とまで疑ってしまいますが、本当に気の置けない仲間や普段から好意を持っているあなたの前でこらえた涙がどっと出たという状態だったのではないでしょうか。これを幼児退行現象とも言います。「泣く」という行為には、浄化作用の効果があり、ひと泣きしてさっぱりした経験はあなたもあるのでは?

そのこと自体に男女の差はないので、男の子だって泣いていいんですが、酒を飲んで自己抑止力をなくしてからグチグチ文句を言いつつ泣くというのは、男でも女でも質のいい人間とは思えません。「酒と泪と男と女」の歌詞に「飲んで飲んで 飲まれて飲んで 飲んで 泣き疲れて眠るまで飲んで」とかいうのがあります。歌としてはなかなか情緒があるのですが、私には古~い男の生き方に思えてなりません。

小さいころ、「男でしょ、泣くんじゃありません!」と叱られて、「だったらお姉ちゃんみたいに、こんなおちんちんない方がいい!」と思って育った男の人もいっぱいいます。もっとも女だって「泣いてかわいいのは××歳まで」みたいに言われますよね。私くらいの年齢になって泣いたとしても、まあ周りに対する表現としては、間違いなくマイナス。前述したように「泣く」というのは、癒やし効果があるのに、泣くことで癒やされていいのは「若い女性」(子どもも含め)に限られるという、まさに男女差別の最たるものではあります。

ただ、あなたの場合、だから「悪い奴」とは思わず、「幼児退行現象」を起こして平気な男をちょっぴり「かわいい」と迷い、「付き合ってみようかな?」という思いがあるようですが、こういう男はやめておいた方が無難でしょう。一生、母親みたいに面倒を見る覚悟があれば別ですが・・・。

第26回

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