【恋愛編】「性行為って子作りのためだけなの?」

【Q】
彼とは付き合い始めて2年です。彼と付き合う前に付き合ってた男性は皆、言い方悪いですけど「手をつけちゃえば俺の女」みたいな人ばっかりだったのに、彼は正反対で、手を握るまでに3ヶ月、キスをするまでに1年かかりました。しかも、まだ一度も抱き合ったことがないんです。何度か2人で旅行にも行きましたけど、「おやすみ」って寝ちゃうし、そばに寄ってこようともしないんです。私に魅力を感じてないのかなあとも思ったんですけど、つい先日プロポーズもされたんです。なんか、面倒くさいっていうか、そういう行為って子どもを作るためだけにあるって思ってるみたいで、愛情の交換っていう考えがないみたい。結婚してもこんな風かと思うと、私としては心配になっちゃいます。

【A】
動物個体が生きている究極の目的は、生き残り、子を作り、自分の遺伝子を次世代に残すことです。その究極の目的達成のため「人間」を含むすべての生物が努力をするわけです。進化の過程でオスとメスによって有性生殖する生物が生まれ、精子を作るのをオス(男性)、卵子を作るのをメス(女性)と定義しました。その二つが受精によって新しい個体、子どもを生み出すわけです。その時子どもの受精率を上げ、生存率を高くするために精子は、ほとんど遺伝子しか持たず、他の配偶子と出会う確率が大きくなるよう小さくて移動性に優れ元気に動き回ることができ、卵子は受精卵が育つための栄養素をたっぷり含んで大きくて、卵子の動きは鈍いけれどたくさんの栄養を子に与えて生存率を上げることができるようになっています。

このような生物学上の違いから、オス(男性)は、小さくて作るのにあまりエネルギーのいらない精子で、できるだけたくさんのメス(女性)を手に入れて交配し、自分の遺伝子を残そうとします。栄養を豊富に含んだ大きな卵子は、作るのにたくさんのエネルギーが必要なので、いっぺんにはそう多くは作れません。ですから、メスがどんなにたくさんのオスと交配しても、できる子の数は自分の卵の数より多くなることはありません。オスは一度にたくさんのメスの卵を受精させられるだけの精子が作れるので、たくさんのメスと交配すればたくさんの子を作り、自分の遺伝子を残すことができます。
従って男性の遺伝学上の特性として、じっくり交際相手を選ぶよりは、できるだけ多くの異性と交際しようとし、女性はその逆にじっくり時間をかけて男性を観察して慎重に交際相手を選ぶという特性を持っていると考えられています。

ですから、普通は男性がさっさとセックスだけですませようとしても、女性ができるだけセックスを先送りして、あの手この手で男性の献身度をテストし、相手が食べ物や隠れ場所などの調達にどの程度優れていて、自分や子どもを守ってくれるかじっくり見定めることになるわけです。そして人間には、男女の協力による長い子育ての期間が必要なことから、「性」の関係も種の保存の場合だけに限定されず、愛の表現としても存在してきました。

ところがあなたの彼は、こういった生物の進化、遺伝学上の理由や人間に与えられた性の行為が愛情の交換であるという大切な点も活用せず、なおかつオスの持つ特性であるより多くのメスと交配できるチャンスさえ利用していないわけですよね。
自分の遺伝子を残すこと、すなわち性行為にガツガツしない男性を、最近では草食系男子と呼び、私たち女性が割と好意を持って受け入れているのは、生物学上自分たちの遺伝子を残すことに夢中になる男性たちの多くが、男が上位で女が下位と考え、自分本位になりがちなのに比べ、あまり乱暴でなく、男女の優位さをつけない価値観を持っているからでしょうか。多少、進化した人種で、生命力は弱目で「面倒くさい」かもしれませんが、新しい生き方ができる可能性を探ってみるのもおもしろいと思います。

ただし、彼のようなタイプは、セックスには前向きではなくても、何かこだわるものを持っていたりすることもあります。性だけのことを考えるのではなく、どういう家庭を築きたいのか、あなた自身がどういう生き方をしたいのか、そんな部分からじっくり考えてみてはどうでしょうか。

第27回

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