【職場編】「女の気持ちがそんなに簡単にわかるわけないじゃん!」

【Q】
入社して4ヶ月が経ちました。学生時代に考えていたよりは、男女が平等で、仕事の上で差別されてるっていう感じはありません。もちろん、女性がお茶汲みなんていうのはないし、仕事の内容も男女というよりは、それぞれの能力に応じて割り振られている感じです。そんな風なので、会社に不満はないんですけど、5歳上の男性の上司が「僕はフェミニストだから・・・」ってやたらと女性の気持ちが分かるようなこと言うんです。「うちの会社って、仕事に男女差がないだろっ。それって僕が上司に進言してるからなんだ」とか言っちゃって、自慢するっていうか・・・。確かに乱暴ではないんですけど、「フェミニスト」って言われれば言われるほど、「それって差別じゃん」って感じるんです。女同士で話してるとすぐ割り込んできたりして、「うん、うん。わかる、わかる」なんて言うんです。これもセクハラですよね。気持ち悪いです!

【A】
「フェミニスト」とは、「女性の権利拡張や男女平等を主張する人」を指します。歴史的には19世紀にフランスで女性の参政権を求める運動が起こり、ヨーロッパを中心に広がって行きました。日本では、20世紀前半に、平塚らいてうたちが「婦人解放運動」として文芸雑誌を発行しました。まだ、女性には選挙権もない時代でした。女性が文章を書くという行為さえ「跳ねっ返り」「女らしくない」と批判、非難の的になる時代に「青鞜」と名付けたその雑誌の最初のページに彼女はこう書き出したのです。「元始、女性は太陽であった」と。彼女たちの努力もあって、第二次大戦後、日本でも女性にやっと選挙権が与えられ、今日では法的にも男女の不平等は禁じられるようになりました。しかし、実際には、仕事や家事育児の面での日常的な差別は続いているのが現状です。
私の浦和カウンセリング研究所へ相談に来る方の多くが、悩みの根っこはこの男女差別です。

さて、あなたの上司は、こういった長い女性たちの人生をかけた運動やそれを本気で支えた男性たちの血のにじむような努力の歴史を知っているわけではなく、「フェミニスト」を気取っているだけのようですね。

こういう上司、いますよね。こういう男性がいたためにフェミニズムは一時「女性をちやほやする」「女性を甘やかす」という意味に取られ、社会から批判の対象になったこともありました。どうもこの上司は「女性を大切にする」ということを売り物にしているように思えます。ただ、あなた自身も「確かに乱暴ではない」と認めているので、レベルの低い「フェミニスト」かもしれません。なんとか本物のフェミニストになっていただくよう働きかけてみてはいかがですか。

あなたの会社は「お茶汲みなんてない」し、仕事の内容もそれぞれの能力に応じて割り振られているとのこと。大企業は別として、現状では相当「男女平等」が通用するラッキーな会社へ就職できたと思います。

「フェミニスト」と言われるとかえって「差別」を感じるというのもよくわかります。なぜなら、「フェミニズム運動」の考え方の一つに「女性を弱者と規定した上で優遇する措置」というものがあるからです。だから、上司の言葉に「差別」を感じるのでしょう。
女性同士の会話に割り込んで「わかる、わかる」という言動をセクハラと思うこと。

セクハラの定義は、男女とも、性を対象にして不快感を引き起こす言動を総称しています。職場にヌード写真のついたカレンダーを貼ったり、上司が部下に「恋人いる?」と何度も聞いたりするのも、男性女性に関わりなく、セクハラに当たります。ですから、もし本当に「気分が悪い」のであれば、その旨、上司に話して遠慮してもらうのもいいでしょう。できれば、こういう上司を女性の味方につけるよう、私たち女性も権利を主張するだけでなく、きちんと義務を果たし、本物のフェミニストを増やして行けたらいい世の中になると思います。

第31回

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