【子親編】「子どもは母親が育てるべき?」

【Q】
結婚して3年。まもなく2歳になる娘がいます。産休のあと、しばらく育児休暇を取りました。娘を保育園に入れて職場復帰をしようとしたんですが、うまく入園できなくて待機児童っていう形になってしまいました。無認可の保育園でも仕方がないかなと思っていたところ、事情を察した義母が「私が預かってもいい」って言ってくれたんです。夫の実家は、そう遠くないし、駅まで行くのに遠回りにもならない。しかもおじいちゃん、おばあちゃんが見てくれるとなれば、こんな安心なことはないので預けることにしました。ところが、預けてみて分かったんです。要するに、義父も義母も、子どもは他人の手に預けるのではなくて、母親が育てるべきと思っていて、自分たちが見ることで、私にプレッシャーをかけようとしていたんです。「子どもには母親が必要」とか「女は家を守らないと」とか、娘を迎えに行くたびに言われます。本来子育ては、女だけがするのではなく、夫だってするべきなのに夫にはそんなこと一切言わないんです。こんなことなら、無認可の保育園にしておけばよかったと後悔しています。

【A】
義父母の考え方は古い!全く古くさい理屈ですね。「子どもは母親が育てるべき」という考え方が長い人間の歴史の中で女性の自由を奪い、女性の社会進出を妨げてきました。男尊女卑の価値観の底辺にあるものです。この考え方がはびこっている限り、女性はもちろん男性も人間として自由に生きることができません。「女は内」という言葉のもう一方は「男は外」というきつい縛りがあるからです。やっと「家庭科男女共修」が定着しつつあるのに、女性の大学教授が「女は内にいるべき」などという暴言を吐いて時代に逆行しています。

そもそも人間以外の動物は自分の遺伝子を残すために必死で、多少の例外はありますが、雄は交尾が終わればさっさと次の相手を探しに行ってしまい、ほとんど子育てには関わりません。私たち人間は、他の動物とは異なる文化を創造し、科学を発展させ、「家庭」というコミュニティを作ってきました。それらを活用すれば、男だって充分子育てもできるし、掃除洗濯、家事全般こなせます。女だって宇宙にも行けるし、多機能細胞の研究もできる。ママになってオリンピックを目指すこともできます。

ましてや、あなたが職場復帰するために2歳のお子さんを義父母に預けている。お子さんにとっても義父母にとっても、とてもいい状況だと思います。2歳ならもう母乳も飲んでいないし、お子さんは祖父母の愛を一身に受けて幸せな時間を過ごしていますよね。

今まで、時代の流れの中で「子どもの発達心理学」がいいように利用されて「母親が育てない子は大人になって愛情不足からうまく自立できない」と言われたり、女性の労働力が必要になってくると反対のことが言われたりしてきました。そういった偏見に振り回されるのではなく、「子どもにとって何が最善か」を考えれば、祖父母に愛されて育っているお子さんは、安心安全な場と充分な愛に包まれているでしょう。そして「孫を預かる」という「出番」を持った義父母も、実はとても生き生きして張り切っているはずです。

義父母が古い考えに縛られ、それを言葉にするのは、あなたにとってはうっとうしいでしょうが、自分たちが手塩にかけた孫娘がとてもいい子に育つと「私たちが育てたから」と自慢する日も近いのではないかと思います。おそらく義父母のお気持ちの中には、「古い考え」もあるとは思いますが、それだけではなく、あなたの言動から子どもへの愛情が希薄と思っていたり、自分の孫を他人の手に預けることへの抵抗もあるのかもしれません。あなたに言わせれば、「そういう考え方そのものが古い」ということになるのかもしれませんが。

お義父様にとっても、お義母様にとっても、預かることが体力的に難しいということでなければ、あなたがもっと義父母にしっかり頼ってしまって、感謝の気持ちを述べる、あなたがお子さんと接しているときは最大限愛情を注いで接し、そういう姿をお義父様、お義母様にも見てもらう。そんな様子を見れば、外に働きに行っても決して母子の関係が悪くなるとは思わず、「子どもには母親が必要」とか「女は家を守らないと」とか言わずに、「孫のことは私たちに任せなさい」くらいな気持ちになるかもしれませんよ。まず、そこから始めてみてください。

第45回

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