【親子編】「高校は少しでもいい男子校に行ってほしい」

【Q】
来年、高校受験の息子がいます。
高校、大学と私立に通わせるのは経済的に厳しいので、高校はできれば公立に行ってもらって、大学だけは自由に選ばせてやりたいと思っています。
ここのところ、週刊誌上で大学入試の高校ランキングが盛んに取り上げられていますが、東大や慶応、早稲田といった有名大学の出身高校ランキングで上位なのは公立、私立を問わず男子校です。大学受験のことを考えて、ランキングのことを息子に話すと「そんなことわかってるよ!自分で考えるから口出さないで!」と怒鳴られてしまいました。どうも好きな女の子がいて、成績も同じくらいなので、共学の高校に一緒に入学したいみたいなんです。だいたい進学についての動機が不純だし、私としては、男の子なんだから将来のことも考えて、少しでもいい男子高に進学してほしいのですが…。

【A】
このご相談には、いくつか問題点があります。1つは「いい高校とは何か?」ということ。あなたは「いい高校」とは「いい大学へ入学できる偏差値の高校」と思っていて、さらに「いい大学」とは「いい会社に就職できる大学」、そして「いい会社」とは「高い給料で安定している会社」と考えている。けれども、それがそのままお子さんの幸せにつながるわけではないという点です。
あなたは、お子さんが小さいころから、「勉強のできる子がいい子」と思って育ててきたのではありませんか?確かに勉強のできる、成績のいいお子さんは「努力」「忍耐」「継続」などという面では優れていると思いますが、その反面、「想像力」「感性」「共感力」「個性」などを抑えて頑張っている子が多いので、自由で伸び伸びした発想がしづらくなったり、「自分らしさ」がよくわからなくなったり、「自分が何をしたいか」が探せなくなったりしがちです。「勉強ができる」「偏差値が高い」、そして「いい高校」「いい大学」に入学し、卒業できたということは、お子さんの職業選択の幅を広げるということはあるでしょう。

けれども、親がそれを「子どもの幸せへの一本道」と考えることは大変危険です。高校、大学くらいの年齢での重要な人生の発達課題は、「自分って何?」「自分はどこへ行こうとしている?」の問いに答えることです。この時期は「自己実現」に向けて「自己探索」をするためのモラトリアム期(猶予)といわれています。

本来なら、この年齢では、ゆっくり自分と向き合い自己発見をする、たくさんの友人との関係性の中で他者理解を学ぶ発達段階なのです。高校選びは、それを原点において、お子さんと話し合ってください。「将来どんなことをやりたいのか?」「どんな人生を送りたいのか?」なども話題になるでしょう。偏差値だけでなく、こうした人としての根本の問いについて、親子で話し合ったり、自分自身に問いかけたりした上で、志望校を決めれば、お子さんの「やる気」にもつながり、結果として成績が上がるということもありますよ。

2つ目は、「男の子なんだから」とおっしゃっていることです。現代社会において、男性が働いて女性が家事という状況があることは確かです。けれども、そろそろこの状況を変えて、性にとらわれることなく個性の問題として、男性も女性も自分に合った人生が送れるよう考えてあげてください。今以上にグローバル化が進んだときには、この状況が変わっていくことが必然です。
あなたの生きてきた時代をもとにお子さんの人生を考えるのではなく、これから先がどんな時代になるのか、しっかり考えた子育てをしましょう。お子さんの人生ですから、あなたがレールを敷くのではなく、お子さんの考えをよく聞き、尊重する姿勢が大切です。

そして最後に、たとえ中学生といえども一人の人間です。お子さんは「自分で考えるから口出さないで!」と立派に発達課題をクリアして成長しています。お子さんの成長を喜び、たとえ高校選択の基準の1つが「好きな女の子と同じ高校に行きたい」というたわいないことであったとしても家の経済的事情なども話した上で「自分で考え自分で選択する」というお子さんの意思を尊重する姿勢を持ちましょう。「口出さないで!」とはっきり言えるお子さんですから、そんなに大きく間違った選択はしないはずです。

うちの研究所にご相談にいらっしゃる皆さんが抱える問題は、出身校や会社のいい悪いには関係なく、夫婦の気持ちの問題、すなわち男性、女性の通じない気持ちの問題です。幸福感を一つに絞り込むのでなく、様々な観点から進路選択を考えるようにしてください。

第49回

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