【職場編】「上司からの指示が私を通り越しちゃう…」

【Q】
「いよいよ30歳の大台かあ…」と考えていたとき昇進の辞令をもらい、係長になりました。部下に5人の主任を持ち、主任は下にそれぞれ3~5人の部下を持っています。主任は主に現場の指揮を執るのが役割で、お店の店長といったところ。係長はデスクワークを中心に、現場の統括的役割を担います。主任までは、管理職といっても仲良しグループのリーダーみたいな感じだったんですが、係長になってデスクワークが中心になり、気持ちを引き締めて管理職として頑張るぞって思っていたんです。ところが、上からの指示が、私を通らず下へおりちゃうんです。最初は、私が新米だからかなって思ってたんですが、私と一緒に係長に昇進した男性はバリバリ仕事をしてる。上司にも、私に下ろしてくれるように話したんですが、「女のおまえの言うことじゃ、なかなか聞かないやつもいるだろっ。まずおまえが信頼される管理職になれ」って言われました。そんなこと言われたって、私を通り越して指示を出されてたら、信頼のされようがありません。

【A】
20人前後の部下を持つ係長に昇進されたとのこと、おめでとうございます。そうなるまでにはそれなりの努力や人には言えない苦しいこともあっただろうとご推察申し上げます。それを乗り越えての係長就任だったのになんたる差別!あなたが憤慨されるのも当然です。

一緒に昇進した男性は部下に指示を出してバリバリ仕事をしているのに、「(私の部下へは)私を通らず下へおりちゃう」という憤り。私があなたを立派だなあと感心したのは、その指示命令系統を不審に思って上司に直談判されたことです。自分が飛び越されていることに気づきもしなかったり、気づいてもうやむやにしたりしないできちっと「私に下ろしてくれるよう話した」とのこと。仕事のできる上司なら、これだけであなたを「係長に昇進させてよかった。見所のあるやつだ」と思ったはず。あとは上司の言うように「女のおまえの言うことじゃ、なかなか聞かないやつもいるだろっ」という女性蔑視の偏見を「まずおまえが信頼される管理職になれ」という忠告に従って(あるいは従ったように見せかけて)クリアしましょう。

私が学生だった50年ほど前「今に見てろっ!男なんて追い越してやる!」と男に追いつけ追い越せと頑張っていました。女性が男性化することが男女差別をなくすことだと思っていたのです。
おそらく今、60代70代を迎えた世代の私たちは、皆そう思って頑張ってきたのですが、それがそもそも男女差別を生み出すもとだったようです。男性の方が女性よりも上だから男性と同じようになりたいと考えていたわけですから。

現代の映画でも感動を呼ぶ映画や小説の多くは、女性は「男性を陰で支える女性」として描かれています。先日観た「神様のカルテⅡ」でも宮崎あおいさんが、桜井翔君を立てる妻役をとてもかわいく演じていました。「武士の献立」の上戸彩さんもそんな感じでした。それでも少しずつは変わってきています。宮崎あおいさんは、写真家という設定でしたし、「武士の献立」の上戸彩さん演じる“春”は、夫より4つも年上で離婚された出戻りの女性で「離婚された出戻りの身」と恐縮するのを余貴美子さん演じる姑に「当地では戻りがつおが脂がのっておいしい」とかばわれていました。50年前は、自己犠牲のみの妻や恋人が圧倒的人気でしたが、近年では個性豊かな強い女性が「自分の持ち味を活かしながら夫の人生を支える」という表現に変わってきているように思います。

男女平等の世の中でないと女性だけでなく男性も幸せになれないはずなのですが、現実の世の中は、急には進まないものですね。焦る気持ち、腹の立つ気持ちはよくわかりますが、長い歴史の中で起こっていること。長い時間を要するとは思いますが、ご一緒に手を携えて進みましょう。少子化で世の中が立ちゆかなくなりつつある現在は、女性を認めさせる絶好のチャンス!「世の中は女性で成り立っている」くらいの気持ちを持って進みましょう。少なくとも私たち女性が産み育てている息子たちにだけは「女をなめるなよ!」とでも言って子育てしましょうか!

第51回

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