【親子編】「娘だってしっかり怒ってよ!」

【Q】
小学1年生と3歳の娘がいます。
夫はサラリーマンですが、それほど残業もなく、朝8時に家を出て帰宅は7時から9時の間くらい。ほぼ毎日娘2人と朝食、夕食を摂ります。そんなせいか娘たちは夫になついていて、娘たちを怒るのは私、甘やかすのは夫みたいな構図が出来ています。
私が怒って厳しい顔をしていても夫の顔は緩んでいるので、怒っても効果がなくだんだんやることがエスカレートしてきました。

先日は、トイレに買った覚えのないガムの包み紙が落ちていたので娘たちを問い詰めると、下の娘がスーパーのお菓子売り場から持ってきてしまったものらしく、2人でこっそり食べていたというのです。とてもショックでした。
夫に「大変なことなんだからあなたも怒ってよ!」と頼んだのですが「男の子なら殴って叱るのもありだろうけど女の子だろっ。優しくし言って聞かせればそのうちわかるよ」と言って2人を膝の上にのせてニヤニヤしながら話すだけです。

【A】
全くあなたのおっしゃる通りですね。
ちょっと見には父親はお子さんたちと朝晩食事を摂り、母親のあなたが厳しく叱り優しくフォローをして子育てのバランスが取れているように見えますが、「男の子なら殴って叱るもありだろうけど女の子だろっ」という言葉から、これは明らかな「男女差別」です。

ましてや今回のように、たとえ3歳の娘さんであっても、ほしいからといって売り場から黙って持ってきてしまう行為、その上お姉さんと2人でトイレでこっそり食べていたという行為から、「悪いこと」と知っているのは明らか。それを「ニヤニヤしながら話す」などもっての外です。そして「男の子なら殴って叱る」というのも、二重に間違った子育てです。一つは、「男の子なら」「女の子なら」という差別的子育て、もう一つは「殴って叱る」という暴力的子育て、その二つの点で大きく間違った子育てになってしまっています。

「男の子なら」「女の子なら」という性の違いを考ええる子育てが必要なのは、思春期に女の子には初潮があり、男の子には精通があるということを心がけておくことくらい。
それも、女の子は毎月出血するのだから大変でいたわるべき存在だとか、昔のようにけがれのある身体だから女は参加すべきでない(たとえば陶芸の窯焚き、大工さんの建前、高野山の女人禁制など)とかいう方向での性の違いにならないことが大切なのに、あなたの夫は、すでにこの流れにしっかり乗って子育てをしてしまっています。
このまま育てると2人の娘さんたちは「私は女なんだから」と人に甘えたり媚びたりして生きるようになり、その代わり「女なんだから」とやりたいことを我慢して男の人に従って生活するのが当たり前という女性になってしまいます。

この万引きという犯罪行為を3歳の娘さんは重大なこととは思わず行ったわけですが、行為の重大さについて、きちんと教えて叱る必要があります。
ここで大切なのは、二つ目の「男の子なら殴って怒る」、「女の子なら優しく膝の上に乗せてニヤニヤ話をする」ということにならないこと。「殴って叱る」は、男の子であろうと女の子であろうと、基本的に間違いです。
暴力的な子育ては、将来、子どもの心に大きな傷になってのこり、子から親への暴力になったり、人生に自信がなくなったり、決していい結果につながらない上、子から子へと引き継がれていってしまうこともよくあります。

ここでは、人々が物を作り、それを私たちがお金で買うことでその人たちが生きている社会の仕組みをきちっと話し、父親が毅然とした態度を取ることで、3歳の娘さんも、「もう絶対しちゃいけない」とわかるはず。

どうか今回のこと以外でも夫婦でよく話し合い、「男の子だから」「女の子だから」という男女差別的な子育てや暴力的子育ての考え方を変えてもらうよう努力してください。そして、あなた自身の中にも「だって私、女だから」などという内なる男女差別がないか点検してみてください。

第54回

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