【子親編】「女性にオープンな義父」

【Q】
義父は68歳。
定年退職して家にいるんですが、多趣味というか、人を集めるのが好きというか…。琴をやったり生け花をやったり…。
もともと兄弟が多かったために、お盆やお正月に親戚が集まるための広い居間があるので、お琴や生け花の先生を呼んで、近所の女性の皆さんとお稽古をしています。
退職後の男性が「濡れ落ち葉」になることが少なくないことを思えばよほど増しなんですが、お稽古仲間とはいえ、そういう女性の皆さんが台所に入ったりすることを嫌がらないどころか、積極的に手伝ってもらったりしちゃうんです。
お湯を沸かしてお茶を入れるくらいはいいんですけど、冷蔵庫に買ってきたものを入れたり、冷蔵庫の中のものでお茶請けを作ったり…。
義母がどう思っているかはよくわかりませんけれど、私は嫁としての立場がなく、「台所には来ないで!」と叫びたくなります。義父の女性にオープンな性格も大事にしてあげたいんですけど、嫁の立場ももっとわかってもらいたいんです。

【A】
「何の問題も無し」です。
むしろあなたと義父母の関係はとても良いと言えます。
義父は嫁であるあなたをすっかり信用し切っているから自分の友人を平気で台所まで入れるのでしょう。その上義母は多分夫のこういうやり方に慣れていて何も不満はないようですからなおさらのことです。

当然永い結婚生活の中で夫の生き方に異義を唱えた時期もおありだったでしょうが(嫁という立場のあなたでさえ「台所は私のもの!」という思いがあるのですからましてや妻ならばもっともっと不快な思いや「台所には来ないで!」という思いをされたことでしょう)、言っても言っても妻の思いを聞く夫でもないことを悟られて「夫のしたいようにさせておく」という処世術を身につけられたのでしょう。

そして息子の妻であるあなたのことも永年つれ添った古女房と同等に扱っているわけです。しかも集めている女性たちは琴や生け花の先生や生徒さんたち。
いいですねえ、これも。あなたもおっしゃっているように「濡れ落ち葉」になるどころか上品で文化的なお仲間の女性たちに囲まれて楽しい日々を送っていらっしゃるわけですから。
そしてお義母様は台所もオープンに心もオープンにしていらっしゃって気をつかうこともやきもちをやくこともせず、永年培った「夫とはかかわらないというかかわり方」を修得されているようですね。

きっとお義父様はお義母様のそういうかかわり方が心にさびしくてそういった女性方を集めていらっしゃるのでしょうから、あなたもできれば「嫁の立場」などという古い考え方は捨てて、人生の大先輩たちに「あらっ、素敵!それどうやって作るのか教えて下さい!」とか「お琴の音色って癒やされますよねえ」とか「まあ、このお花、こういう風に生けると一段と可憐ですねえ!」とか、お義父様のそばでお仲間に入れてもらってはいかがでしょうか?

お義父様はきっと停年までの永い間、堅いお仕事、公務員とか警察関係とか管理に追われる日々を送り、長男としてご兄弟の面倒をみてのご勇退。退職後は優雅に人生を送りたい、そして仕事でかかわってきた武骨で人を蹴落してでも自分が上にいこうとする男たちではなく、穏やかで優しい女性たちに囲まれて人生を終りたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。

あなたのように人に気を使えて優しい女性を妻にできた息子のことをちょっぴりうらやましいと思っていらっしゃるかもしれません。あなたのお連れ合いも、全く安心し切って、両親をあなたに委ねていらっしゃるようですから。

第55回

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