【職場編】「女を利用して営業するな!」

【Q】
私は総務部で事務職をしています。
営業職ではないけれど、会社を訪ねてくるお得意先の社長さんや営業の皆さんの窓口になることもよくあります。そういうお得意先の皆様に「外で打ち合わせをしませんか」とか「今度飲みに行きませんか」とか誘われることもあります。私は事務職なので、本来の役目から言えば、接待や営業は範囲外と理解して、プライベートなお誘いとしてやんわりと断ってきました。

ところが先日、お得意様のTさんからお誘いを受けているところに社長がいて、「Tさんは、君に用があるって言っていらっしゃるんだから、外で話をしてあげてくださいよ」と言われました。
Tさんはいつも私を変な目で見ている気がするし、社長もそれを知ってるはずなのに、女を武器にしたみたいな営業を仕掛けようとしている会社のやり方には納得がいきません。

【A】
このようなケースは完全にセクハラですねえ。俗っぽい言い方をすれば、色仕掛けの営業とでも言いましょうか…。男性にちやほやされるので、それをあまり嫌がらない女性も多く、なかなかなくならないのですが、あなたはそういう営業のための接待が嫌なんですよね。あなたのそういう感覚、大事にしましょう。

社長はあなたが営業職でなく事務職なのにもかかわらず、あなたの性的な資質を利用して営業成績を上げようとしていると考えられるわけですから、当然セクハラに当たると考えるべきで、訴えれば社長は法的制裁を受けることになるでしょう。社長から身体を触られるとか、飲みに誘われるとかの直接的なセクハラではないにしても、本来社員がそういう状況にならないよう努めなければならない社長の責任ですから、性的資質を利用しようとしたことだけでなく、そういった状況から守らなかったということだけでも、責任は免れませんね。

昨今、セクハラについてはかなり厳しい基準が設けられていて、男性の上司が部下の女性に肩たたきやマッサージをさせたり、その逆に女性の上司が部下の男性に宴会で裸踊りをさせたりなどというのは当然のこと、男性が女性にお茶くみを強いる(女性の上司が男性にという場合もあるでしょう)、宴会でお酌を強いる、特別な事情がないのに水着の女性(あるいは男性)のポスターやカレンダーを貼ったりするなどというのも、セクハラです。
ですので、どうしても嫌で、やめさせるための強硬手段を取るとい言うなら、法的手段に出るというのもありですが、あなたの場合は、社長に法的制裁を科そうとしているわけではなく、現状、なんとか顧客に気に入られている私を、性的な道具として営業に使わずに、きっちり事務職としての仕事をさせろということですよね。
あなたの相談からは、会社にそれほど多くの不満を持っているとは考えにくいので、たとえ法的手段に訴えてあなたが勝ったとしても、そのことで働きづらくなっては元も子もありません。

本来は、こういうことを一つ一つきちんと社長や上司と筋を通して話し合い、自分の本来の仕事は事務職であること、今回のように営業として顧客を外で接待することは採用時の業務内容に含まれていないこと、その上、誘った男性顧客があなたに対し、女性として好意を持っている(あるいはよくない意味で女性として興味がある)ことを知っている社長が、それをあえて利用して職務命令とも取れるやり方であなたに指示を出したことは、職務命令違反であるときっちり告げて断るべきでしょうが、これにはよほどの勇気と決意が必要で、時には会社を辞めることすら覚悟しないとできないことです。

とはいえ、とても腹の立っているあなた。勇気を出して、社長にはっきりあなたの気持ちを伝えましょう。お得意様の前で、「Tさんは、君に用があるって言っていらっしゃるんだから、外で話をしてあげてくださいよ」なんて言える社長さんとあなたの関係は、よほど悪いか、かなりいいかのどちらか。いい関係なら、今回のようなことは2度と起きないはず。まず、あり得ないとは思いますが、もし悪い関係でこじれるようなら、退社も覚悟で臨んでみてください。

第56回

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