男と女のQ&A【職場編】「会社のマタハラよりつらい同僚のマタハラ」

【Q】
結婚して5年です。
仕事のこともあり、子どもを作らずに過ごしてきたんですが、もう34歳。
そろそろ限界かなあと、昨年子育て支援の充実した地域に引っ越して、現在妊娠7ヶ月です。
会社には恵まれていて、産休も育児休暇も希望すればけっこう取れるし、職場復帰もできるので、少し育児休暇を取って復帰しますと言ったら、「退社しないで頑張るんだ?」と上司に言われ、受け取り方によってはマタハラ?とも思いましたが、励まし取ることにしました。ショックだったのは同僚です。
 
妊娠の話をしたときは「おめでとう!」と祝福してくれたのに、職場復帰の話をしたら、女の人たちは、「えーっ、辞めないのぉ?」と明らかに「私たちに負担がかかるでしょ!」という反応。
男の人たちは「だから女は使えないよな」と陰でこそこそ。
復帰後、こんな雰囲気の中で働くのかと思うと辞めた方がいいのかなあと迷います。
 
【A】
まだまだこれが私たち働く女性を取り巻く現状でしょうね。
「産休も育休も希望すればけっこう取れる」というのは、本来そうあるべきですが、「恵まれている」と言われてしまいそうですよね。
1986年男女雇用機会均等法が施行され、「すべての男女差別が撤廃された」ことになっていても、この法律は罰則のない努力義務規定が多く、期待されたほどの効果があるとは言えませんでした。
 
企業側は「総合職」と「一般職」という職種による人事制度を導入して、女性がそれまで通り楽で補助的、けれども昇進・昇給には閉ざされた一般職を自ら選択した形を取るジェンダー・セグリゲーション(男女の職種分離)を実施し、実質的な差別を温存してしまいました。その結果、賃金格差や女性が結婚・出産により一時的に就労をやめ、子育てが一段落したところで再就職することで起こるM字型労働力率は残ったままです。
 
1999年には、男女雇用機会均等法の改正が行われ、差別への対応が「努力義務」から「差別の禁止」へと強化されましたが、改正後も「男女の労働のあり方そのものを見直す」という根本的な問題に対しては不十分です。家事・育児さらには介護までも女性だけが引き受けるというケースがほとんどですから、結局、女性は結婚、出産、育児により、キャリアを中断せざるを得ないわけです。
こういう背景の中で、あなたのケースのように上司や男性はもちろん、同僚の女性からも妊娠したら「周りに迷惑をかけないようにいったん辞めるのが常識」という習慣、慣例が当たり前になってしまっているのです。家事・育児は、おとぎ話の王子様に出会うように理解ある男性に出会って結婚することができれば、五分五分または五分五分以上に男性に負担してもらうということはできるかもしれません。とはいえおとぎ話はおとぎ話、女性に理解があるという程度の男性では、なかなかそうはいかないものですね。
 
同僚の女性や男性たちの反応は、あなたにとって辛いことでしょうが、なんとかこうした偏見に満ちた現状を打破するため、迷いながらでも職場復帰を果たしてください。
あなたが家事・育児をこなしながら復帰して必死で働く姿を見て、同僚の女性や男性も応援していくれると信じています。もちろん夫の支えがあってのことですが、あなたのように出産がすんだら職場復帰をするのが普通をいう社会を創ることが男女共に幸せになる道なのですから。
第61回

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