男と女のQ&A【職場編】「女なのに後輩の女性に惹かれる私」

【Q】
今の会社に勤めて5年になります。
大学の時には一応彼氏いて、性関係もあったんです。妊娠も経験しました。
私の中には産むことも選択肢としてあったんですが、彼には全くその気がないようなので、堕ろす決断をして一人で病院に行き掻爬しました。
就職してからは、男女何人かで飲みに行ったり、食事に行ったりはしましたが、二人だけの交際をする気にはなれず、心がときめくようなこともありませんでした。
 
ところが、今年入社してきた女性に心がときめいてしまったんです。
初めて会ったときに、ずいぶんかわいい子が入ってきたって思ったんですけど、その後は顔を合わせるたびにドキドキしちゃって…。女子会なんかもやりますから、気の合う女の子もいるんですけど、彼女に対しては明らかに違う感情です。ちょっとでもそばにいたいっていうか…。
彼女にも彼氏はいないみたいだし、私と仲もいいのでこのままでもいいんですけど、彼女に彼氏が出来たらどうしようって不安です。
もちろん、彼女は私がそんな風に思っていることは知りません。
 
【A】
性別は男と女の2種類で、男は女を、女は男を性愛の対象にするという常識だけにとらわれていた時代、私達は多くの事を見失ってきました。
しかし今、時代はやっと多様な性のあり方を許容できるリベラルな社会へと近づいてきたように見えます。そういった時代背景の中であなたは「後輩の女性に惹かれる私」や「彼女に彼氏ができたらどうしようと不安」でご相談してくださっているんですね。
 
これまでの社会では同性に惹かれる人は異常というレッテルを貼り、「同性愛者」とひとくくりに呼び、差別の対象にしてきました。
今でもメディアの世界では「おねえタレント」と呼ばれる人たちはそのことで笑いをとったりしています。
しかし同性愛者のセクシュアリティも異性愛者同様さまざまなのに、メディアや社会は同性愛という言葉の響きの中に「いつも恋愛やセックスのことを考えている人たち」というような差別的なものを含んで使うことが多いのです。同性愛者への差別的偏見はその人たちの性行為が生殖に結びつかないという宗教上の理由で4世紀後半から犯罪とみなされ、処罰や治療の対象とされてきた長い歴史があります。20世紀に同性愛に関するさまざまな反差別運動や解放運動が起こり、同性カップルに異性カップルと同じ権利の保障を与える動きが日本でも始まっています。
つい先日、全米では同性婚が認められましたが、日本は大きく後れていますね。
 
ご相談者のあなたも知らず知らずにこうした社会の流れや動き、特にメディアの影響力を受けて生きています。あなたが自分自身のセクシュアリティ、すなわち、どんなものやどんなことを性的と感じるかという事柄に正直に向き合った時、後輩の女性に惹かれたという事態を大切にしていいわけですが、その時、色々なまわりの影響もあなどれないという事も考えておいてください。
その影響を受けている事のひとつに大学時代の恋愛と妊娠、掻爬という出来事があります。
この恋愛の結末が折角授かった命なのに、自分は産むという選択肢もありながら一人で掻爬に行くという不幸な結末に終わったことの影響です。
男性への失望と不信が強くあなたの心と身体に残っているのでしょう。
 
そして同性愛者の長い暗い差別の歴史がなくなり始めた今、あなたが妊娠や掻爬という事態からは安心で安全な後輩の女性に惹かれた面もあるのかもしれません。
いずれにしても自分の性的指向、即ち性的魅力を感じる対象を正直に認め、自らの心と身体の動きを見守ってください。
第76回

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