【Q】
義父が大腸がんの手術をしました。
手術で全摘できるから、ほぼ完治するだろうと言われました。
義父は明るく賑やかな人なんですが、がんと診断されたあとはまるで別人で、ほとんど口をきかなくなってしまいました。手術は無事に済み、周りはホッとしたんですけど、そのあとが大変なんです。
それも私だけ。個室なので、面会時間をあまりうるさく言われないことをいいことに、私をずっと付き添わせて、何から何まで私にやらせるんです。挙げ句の果ては、体をさすれ、体を拭けなど、とにかく身体の接触を求めてきます。義母だっていられないわけじゃないのに、義母にはほとんど口もきかず、「嫁がいてくれるっていうんだからおまえは帰れ」ってすぐ帰しちゃうんです。私、そんなこと言ってないし…。
別に義父の世話をするのがいやなわけじゃないです。でも、恋人同士じゃないんだから…。私ももう切れそうになります。
【A】
ご苦労様です。お疲れ様です。
お義父さんはまるで恋人か恋女房のように自分のそばにおきたがる。
あなたは「恋人同士じゃないんだから」と切れそうになっているというわけですね。それにお義母さんだって付き添えない状況じゃない。なのに私に「体をさすれ、体を拭け」と接触させようとする、あなたとすれば「役割が違います!」と叫びたい気持ちでしょうね。
ところでちょっと伺いますが、このお義父さんの息子であるあなたの夫とはとても仲のいいご夫婦でいらっしゃいますよね?あなたの夫はあ、あなたのことが大好きで大切にしてくれていますよね?
実は父親と息子の好む女性の容姿や性格や行動パターン、要するに「生き方」といってもいいでしょうか。それは全く同じといっていいほど、似かよっているのです。
生物学上の異性の好みが似ていることが多いのです。息子の連れ合いを自分の娘のように可愛がるお義父さんて結構いるじゃないですか。動物の生き残り戦略の一つとして、DNAを受け継いでもらう女性のタイプは父と息子で似ているわけです。
ですからお義父さんがこれほどあなたに執心ということは、おそらくあなたの夫もまさにあなたにピッタリのタイプ。ですが現在健康で若い彼は、さすがにあなたにベタベタしているわけにもいかないのですが、あなたが息子の嫁となって以来、憎からず思ってきたお義父さんは無意識のうちに「おーっ、わしも息子の女房のような女性がよかったなぁ~」とうらやましく思い続けてきたのでしょう。
元気な時はあまりあからさまにその気持ちを言動に表わすのははばかられ押さえていたけれど、生命の危険もある状態になり、無意識に心のフタが開いて素直にあなたを求める状態になったわけです。
あなたは感心にも「別に義父の世話をするのがいやなわけではない」と言っているので、どうかお義父さんの一生で最後(いえ、大腸がんの手術は成功したようですが)のわがままというか、夢を叶えさせてあげてください。きっと体調が回復して心理状態が平静になれば、またもとのように息子の連れ合いとしての距離を取れるようになりますから。
今は不安で誰かに甘えたい、その甘えたい対象があまり好みではなかった自分の妻ではなく、息子の妻になっているとお考えください。
あなたの夫は「しょうがないなぁ、おやじ」と思いながら昔から「俺と好みが一緒だったもんなぁ」とあなたに感謝し、義父のことをずっとわずらわしく思ってきたであろうお義母さんも「悪いけどお願いね」と助かっていることでしょう。
第80回