【Q】
我が家は3世代同居で、夫の両親、夫と私、中学生の息子と娘の6人で暮らしています。
義父は76歳ですが、退職後はジョギング、水泳、ゴルフと第2の人生を満喫しているといった様子でした。ところが、1年ほど前からおかしくなったんです。何度も食事をしようとしたり、ちょっとしたことで怒ったり…。
穏やかな人だったのに、いきなり義母を叩いたこともありました。認知症と診断されました。同居ですから覚悟はしていたし、出来るだけ自宅で介護できればと思っているんですが、問題は義母なんです。義父と義母は仲のいい夫婦だと思っていました。
義父が元気なときは、いつも母が一緒で、2人で楽しそうにしていました。
義母は義父より5歳年下なので「あなたの面倒は私が看るから」と言っていました。
ところが、義父が認知症と分かったとたん手のひらを返すように父に冷たくなったんです。「早く死ねばいい」とか「早くどこか施設を探してちょうだい」とか言うようになりました。義父が分からないことをいいことに、虐待まがいのこともしたりします。
私は、両親を夫婦の鏡と思っていたので、最近の義母の言動は信じられません。どんな夫婦も最後はああなるのかなあと思うと自分たち夫婦のことも不安です。
【A】
あなたは今、二つのことで悩んでいらっしゃいますね。
一つは義母が認知症になった義父に対し手のひらを返すように冷たくなり、「あなたの面倒は私が看るから」と言っていたのが嘘のように「早く死ねばいい」などと言って、虐待まがいのことをするようになってしまい、「夫婦の鏡」と思っていた義母の言動が信じられずショックを受けているということ。もう一つはどんな夫婦でも最後はああなるのかなあ、自分たちも…と思うと不安でたまらなくなってくる、ということですよね。
まずご両親の事ですが、きっとお義母様は結婚以来、本当に楽しい生活ではなかったんでしょうねぇ。仲のいいふりをしていた、楽しそうなふりをしていたということなのでしょう。
お義母様がよほどのキャリアウーマンや資産家の娘でもない限り、結婚して子どもを産み育て、夫の世話をする、そういう主婦としての仕事の一つに仲のいい夫婦のふりや楽しそうなふりをすることも含まれていたのでしょう。
私のカウンセリングルームを訪れる女性のクライアントは言うまでもなく、カウンセラー養成講座を受講し、カウンセラーを目指す女性の皆さんも、胸のうちを明かせば一度や二度は「夫が死んでくれたらいい」と思ったことがあると言います。ある女性は「私って悪魔です。だって夫が早く死ねばいいとよく思うんです。時には殺してやりたいって思う事もあります。でもね、まだ小学生と中学生の子どもがいますから…。子どもたちが父親殺しの母を持つことになるでしょ?それはさせられないって自分を押さえるんです。私ってひどいですよね」と泣きました。
それ程に私たち女性は意に沿わなくても、若い頃から男性には従うよう躾けられ教えられて、そうしなければ生きていけない、そうしなければ損をする、そうしなければ幸せになれないと思い込まされて生きてきているのです。男の顔色をうまく読み男を立てる女だけが幸せになれるかのように。
どうぞお義母様を自由の身にさせて上げてください。
お義母様がおっしゃっているように、どこかいい「施設」を探してあげてください。自宅で介護したいというあなたの優しさには敬意を表しますが、お義母様は勿論、お義父様にとっても、手厚く介護してくれる施設で時々、お義母様やご家族がお見舞いに行かれるのが幸せな人生だと思います。
きっとお義母様も又、昔のようにいい妻のふり、仲のいい夫婦のふりがお出来になりますから。
そしてもう一つの大切なこと。あなたたちご夫婦がこうならないためには、あなたが「いい妻のふり」「いい母のふり」をしないですむ夫婦関係、「自分はどう生きたいのか」を自問自答して、自分の人生を自分で選択して生きていく毎日にしてください。
夫ともよく話をしてくださいね。
第85回