男と女のQ&A【職場編】「正社員なんてやらないでパートやればいいじゃん!」

【Q】
まったく頭にくるんですよ。
先週は子どもがインフルエンザ、今度は自分がインフルエンザだって。
そりゃあインフルエンザで会社に来られても困るけど、それだけじゃないからね。
今年に入ってからだけだって、三者面談だの授業参観だのこれで5回目。年間何回休めば気がすむんだっちゅうの!子どもがいればいろいろなことがあって休まなきゃならないのも分かる。
でもそれならうちみたいなところで正社員やらないでスーパーとかファミレスとかでパートやればいいじゃん。「扶養の範囲内でお願いします」みたいな…。
うちの仕事は「子どもの具合が悪いからちょっと代わって」みたいなの出来ないんですよ。誰か休めばその分周りの仕事が増えるってことをもっと考えてほしい。
 
【A】
「まったく頭にくる」とおっしゃるのはよく分かります。
日々の仕事の量は毎日ほぼ変わらないでしょうから当然周りの人の負担が増えますよね。
普段10人でこなしている仕事なら、1人休んでもほぼ1割増しの仕事量ですみますが、そんなに大勢でこなしている職場なんてよほどの大企業でない限りありません。
あなたの職場が3人なら普段の5割増し、2人なら2倍の仕事量になってしまいます。
 
そう考えるとあなたの気持ちも十分理解できますが、まあ腹を立てているだけでなく、ちょっと冷静に考えてみましょう。ご相談の内容から、「彼女」は正社員のようですから、正社員としての年次有給休暇が認められています。勤続年数にもよりますが、労働基準法第39条1項は「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています。勤続年数が増えるに従って休暇の日数も増え、勤続年数6年6ヶ月以上では、さらに10日の有給休暇が認められます。もし「彼女」が1年勤務しているとすれば1日、6年6ヶ月以上勤務しているとすれば20日の有給休暇を取ることが出来るわけです。
 
それに照らして考えたとき、年明けから2ヶ月あまりで5回の休暇は少ないとはいえませんから、あなたが「年間何回休めば気がすむんだっちゅうの」と感じておられることはもっともでしょう。とはいえ、休暇は散らして取らなければならないものでもありませんから、「彼女」は正当な権利を行使しているにすぎません。当然のことながら、それはあなたにも認められている権利なのです。
おそらくあなたも有給休暇を取っていますよね。海外旅行に行ったり、実家に帰ったり…。
「彼女」が働いている時に休暇を取ったりしていませんか?
そんな時、「彼女」はあなたに「楽しんできてね!」なんて声をかけていたりして…。もし、「彼女」が海外旅行のためにまとめて5日間の休暇を取ったとしたら、あなたは今回と同じように「頭にくる」とおっしゃったでしょうか?あなたは、自分が出かけた海外のことを思い出して「楽しんできてね!」と声をかけたかもしれませんね。そうです。おそらく「あなたが頭にくる」のは「彼女」が休暇を取ったことではなく、その理由ですよね。
 
もし、子どものために休暇を取ったのが「彼」だったらどうでしょう。
職場の仲間と「彼、大変よね。奥さんは何してるのかしら?」なんて話しになりませんか?
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)が制定されたのは1985年ですから、すでに30年が経ちました。にもかかわらず、なかなか男女の差別はなくなりません。なぜなら、「私たちに昔ながらの男女の役割が刷り込まれている」からです。「子育ては女性がするもの」「女性は家で子育てに専念すべき」といった意識が無意識の部分に存在するということです。
「うちみたいなところで正社員やらないでスーパーとかファミレスとかでパートやればいいじゃん」「扶養の範囲内でお願いします」とおっしゃるあなたの心の中には「女は仕事の前に子育て」という意識がありませんか?あなたが今後結婚をして子育てをする方だとしたら、すぐにでもあなたが「彼女」になりますよね。すでに子育てを終えられている方だとしたら、おそらく「彼女」と同じようなことをしてきたことと思います。もし「彼女」の休暇によるあなたの負担が重すぎるのなら、「彼女」と一緒に状況を上司に相談してみてください。
女性同士で相手の非難をするのではなく、しっかりと手を組み男女雇用機会均等法が目指す社会を作っていきましょう。
第91回

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