男と女のQ&A【夫婦編】「離婚届に印は押したものの出せないんです」

【Q】
結婚して15年になります。
夫婦としてうまくいっていたのは結婚して7~8年くらい。
2年目に長女、翌年長男が生まれ、落ち着いて夫婦関係について考えることも暇もなく、ただ時が流れていたんですかねえ…。幸せだと思っていました。
ところが子どもが学校に上がるころになると、子どもに対する接し方や目指す家庭像とか徐々に違いがはっきりしてきて喧嘩になることもありました。最初は些細なことと思っていたんですが、実はそれが人生観の違いだったんです。お互い一緒にやっていくことは難しいと思うようになりました。下の子が小学校を卒業するのを機に私から離婚を言い出しました。
夫も同意して離婚届に印は押したものの出せないんです。もう2ヶ月になるのに未だに出せません。特に理由はないんですけど、辛かったことばかりでなく楽しかったことも脳裏に浮かんで、15年間が人生から消えてなくなってしまうと思うと、最後の最後で前に踏み出せません。
 
【A】
15年一緒に暮らしているとはさすがに簡単には別れられないでしょう。
暴力とか浮気とか買い物やアルコール依存などはっきりした状況が夫に見られれば自分も別れたいと思い、周りも「早く別れた方がいいよ」と言ってくれます。そういう状態でも、「優しい面もある」とか「昔は優しかったのだから私が悪いのかも」とか「私が何とかしてあげよう」等々と思って別れられない人も少なくありません。
 
あなたのように些細な違いと思っていたことが人生観の違いとわかるような場合、辛かったことばかりでなく、楽しかったことも思い出されて別れづらくなります。別れづらくなっている原因の1つは「人生観の違い」という抽象的なことが一緒にやっていくのが難しいと思うきっかけだということ。ただし、これはとても大きな違いで15年かかっても埋められないどころか、子どもの育て方、目指す家庭像の理想が徐々に離れていくばかりだったわけです。
 
このあと修復は難しいでしょうね。目に見えない心の傷なので、「まあこのままでも生きていけないことはないかぁ…」と思ってしまう。特に経済的に夫に負うところが多かった結婚生活だと、「このまま我慢していた方が楽?!」ということになりがちです。
もう1つの別れづらい原因は、動物実験でわかるような檻の中に入れた動物をいじめていると檻の出口を開けても逃げる意欲を失って、じっとうずくまったままになるという、その状態になってはいませんか?それでも自分の感覚を大事にして離婚を言い出し、夫も同意して離婚届を作成したあなたの勇気に拍手を送り応援したいと思います。
 
別れづらい最後の原因は昔ながらの風習、慣行、文化。「一度嫁したら墓場まで」と言われる意識、「妻は夫が多少妻の気に入らないこと、「飲む・打つ・買う」くらいのことをことをしてもじっと我慢するのがいい女。ましてや人生観の違いなどというよくわからないもののために女性の方から離婚を言い出すなんてひどい人!」という親や親戚や周囲の目、あるいは自分の意識が根強いのではありませんか?「そんな意識は持っていない」とおっしゃる人にも少なからず刷り込まれているものです。
 
15年というあなたが思い悩みつつ子どもを育てた日々は、決して人生から消えてしまうわけではなく、これからの充実した生き方の糧になること間違いありません。勇気をもって離婚届を出してください。その前に親権のこと、養育費のこと、財産分与のこと、しっかり夫や弁護士と相談することをお勧めします。
第93回

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