男と女のQ&A【親子編】「息子との距離が難しい」

【Q】
高校1年生の娘と中学2年生の息子がいます。
娘の子育ては、ここまでうまくいったと思っています。小学生のころに反抗期があり、怒鳴り合ったことも何度かありましたが、中学生になるとピタッと収まって、話もよく聞くし、手伝いもよくするようになりました。今は私の主婦としての仕事の何分の1かは担ってくれているくらいです。
娘で苦労したという感覚がなかったので、息子に対しても娘と同じように接していたつもりなんですが、うまくいきません。中学に入ったころから私の言うこと聞かなくなり、注意しても無視されるようになりました。反抗期だからそのうち収まるだろうとあまり気にしないようにしていたんですが、夫に「おまえ、息子とべたべたしすぎだろっ。娘にはそんな態度じゃなかったぞ!今の様子じゃ、親からの自立にも妨げだ!」と強い口調で叱責されました。
私は娘と息子を同じように扱っているつもりだし、これまでの息子との関係だってそんなに近かったとは思っていません。でも、夫にそう言われると、私の何が悪いのかまったくわからず、息子との距離をどう取ればいいのか困ってしまっています。
 
【A】
息子さんとの距離が近すぎるようですね。
夫から見て「べたべたしているように感じるのはまさに「親からの自立の妨げ」と思います。ちょうど反抗期とのことですからこの機会に息子さんに心身共に近づきすぎず距離を置いてください。「息子に対しても娘と同じように接していたつもり」とおっしゃっていますが「つもり」なだけで「無意識」に息子さんにはべたべたしているのです。
 
1900年に「夢判断」という著書を書いた精神科医フロイトは、人の無意識の世界の研究で有名になりましたが、彼の学説の中に「エディプスコンプレックス」というものがあります。
ギリシャ神話の「オイデプス(エディプス)王」の物語から名付けられたコンプレックス理論です。
生まれた幼い王子がその国に災いをもたらすと占われ、王子は捨てられてしまいます。捨てられた王子は他家の王子として育ち、生まれた国との戦いで実父を殺し、若く美しかった王妃を、母と知らず妻としてしまうのです。それがわかった母であり妻である王妃は自死し、王子も目を剣で突いて自死しようとしますが果たせず、放浪の旅に出るという大変な悲劇です。
「コンプレックス」というのは「劣等感」というように訳されていますが、フロイト理論では「考え方の癖・偏り」とされています。フロイトは子どもたちは異性親に強く愛着を持つ癖があり、親の方も異性の子どもにより「無意識」のうちにより多くの愛情を注いでしまうという学説で、「エディプスコンプレックス」と呼びました。一般的には「マザコン(マザーコンプレックス)」と言っています。
 
思春期になり、女の子では初潮の始まるころ、男の子では精通のころにそれぞれライバルのように感じていた同性親を乗り越え、異性親への愛着を断ち切ることで、一人前の人として成長していきます。それまで息子は愛情の対象が母、娘は父なのですから、同性親はライバル視される存在なのです。子どもたちが身体が大人になり、心も大人になる過程で葛藤しつつこの状態を乗り越えて親から離れて行くとき、身体と心がうまく一致して大人になります。ところが、本人もわけがわからず親に反抗的になったりするのです。それが「反抗期」です。
 
これらの状態は「無意識」のうちに起こるので、あなたも「娘と息子を同じように扱っているつもり」でも、おそらくかなり息子さんに甘かったり近づいたりしているのでしょう。
どうか、意識して距離を置き、息子さんの自立の妨げにならないようにしましょう。関わりすぎず、信頼して見守るだけにして、手や口を出さないよう自分に言い聞かせてください。
第94回

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