男と女のQ&A【職場編】「セクハラに感じない私って変?」

【Q】
毎年、私の恒例なんですが、夏を迎える準備に思い切って髪を切ります。真夏のロングヘアーは暑いし、海へ行ったり山へ行ったり、夏のレジャーには邪魔なので…。去年もかなり切ったんです。その時、男性上司から「髪、切ったんだ?!短いのもいいね!」って言われました。
上司の言葉を聞いた先輩や同僚の女性の人たちが上司に「セクハラはやめてください」と抗議したんです。女性の人たちが私に向かって「気分悪いでしょ?!そういう言い方してほしくないよね?!」と言うので、私はセクハラっていうほどには感じていなかったんですけど、一応うなずいたんです。上司から「申し訳なかった」みたいな謝罪があって終わったんです。今年も先日切りました。当たり前ですけど今年は上司は無言でした。でも「えっ、全然私のこと見てくれてないの?」って、私はとっても寂しい気がしたんです。去年のことがあるから、上司が私に声をかけないのも当然だし、かといって今の私の気持ちを女性の人たちに話すわけにもいかないし…。セクハラに感じない私は変ですか?
 
【A】
セクハラの基本的定義は「組織内の権力関係を背景にした性関係の強制」とされています。もう少し広義に「それを拒絶する立場にない人に対して向けられた性的関心」と定義する場合もあります。セクハラの加害者、被害者には誰でもなり得ますが、実際には男性が加害者、女性が被害者という事例が圧倒的に多いようです。
 
米国の雇用機会平等委員会(EEOC)のガイドラインでは、職場におけるセクハラを「代償型」(職場の上司が部下に対して雇用や昇進上の決定と引き替えに性関係を要求するような場合)と「環境型」(女性のヌード写真を掲示したり、卑猥な言葉でからかう等、女性にとって不快な職場環境)とに分類しましたが、どちらにも分類しにくいグレーゾーンのセクハラもたくさんあります。環境型には「言葉によるもの」「行動によるもの」「資格によるもの」があります。言葉によるものは「胸が大きい」「足が太い」「はげ」「デブ」などの身体に関する発言です。「今日はデート?」「まだ結婚しないの?」「子どもはまだ?」等、プライベートな事柄に触れるものも含まれます。
 
あなたの場合はこれに該当するとして、先輩や同僚の女性たちが上司に抗議したわけです。言われた本人は不快に感じたわけではないのですが、周りの女性たちにとっては性差別的に聞こえたのでしょう。元来、この場合の職場は髪の長短や容姿で採用されて仕事についているわけではないのですから、上司としては場を和ませたり、あなたへの励ましを込めた褒め言葉のつもりだったのでしょうが、不用意な発言だったようですね。
 
「申し訳なかった」と謝罪した上司は、もちろん今年は髪を短くしたあなたに無言でした。それを「全然私のこと見てくれていないの?」と思うあなたは性差別、性別役割意識から抜け出していないと思われます。もし男女が対等な立場で仕事をしているとすれば、あなたへの励ましや褒め言葉は髪型の変化ではなく、上司として仕事の成果を評価するはずです。上司のこの褒め言葉には「女は可愛ければいい」的な底意が感じられ、居合わせた女性たちを不快にしたものと思われます。
環境型の「行動によるもの」の一つに宴会などでのお酌の強要なども含まれますし、視覚型では職場のカレンダーにヌードやそれに近い水着の写真があるものを使用しているなどもセクハラです。男女が対等に生きることの感覚は長い不平等の中で失われています。私たち女性の中にある「内なる男尊女卑」を排除したいものです。
 
もしあなたがこの上司の男性に「見られていたい」という別な感情を持っているようでしたら、それは職場での仕事と切り離したお付き合いを考えた方がいいかもしれませんね。
第96回

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