男と女のQ&A【夫婦編】「単身赴任の夫が帰ってこない」

【Q】
結婚して15年になります。
夫は転勤が多く、自宅からそれほど遠くない場合は、夫に少し無理をお願いして、自宅から通勤してもらうのですが、遠方になると逆に子どもたちに負担はかかりますが、家族全員で引越をしてきました。
子どもが小さいときから数えると東京から始まって、大阪、福岡、札幌、そして東京と4回引っ越ししてきました。今はまた大阪ですが、子どもの受験のことがあり単身赴任してもらいました。2年になります。
土日はほぼ休みなので、最初は金曜の夜帰ってきて、月曜の朝少し早目に出て行くというパターンだったんですが、「夜遅いのはきつい」「朝早いのは辛い」と言って帰りが土曜になり、出かけるのが日曜になり、今では月に1度しか帰ってこなくなりました。
友達は「それって絶対女だよ」と言います。そう言われてみると私もそんな気がしてきて、子どもの受験を控え、とても不安になってきました。
【A】
夫がサラリーマンで、父親の転勤に子どもが小さいうちは家族全員で全国どこへでも転々と引っ越しをしてついて行く、子どもが受験期にさしかかると夫が単身赴任をする。よくあるパターンですよね。あまりに当然のように考えられていて、この不自然さが批難されることはなく、「大変ねぇ、でも仕方ないわよね」で片付けられています。
歴史的に考えれば、第二次大戦前までは、日本の人口の過半数を占めていた農家では、妻や子どもも含めた一家全員で農業に邁進することが当然でした。そして、その暮らしぶりは、土地と密着していたわけですから、あなたのお宅のように東京、大阪、福岡、札幌、そして東京と4回も流浪の民のように引っ越すこともありませんでした。
また、妻であり母であるあなたのような女性が生産労働に従事せず、家事、育児を第1の役目とする「主婦」という形の生き方をするようになったのも歴史的には比較的新しいのです。
もう少し詳しく歴史をたどれば、明治・大正期、産業化が起こり、主として土地を与えられない農家の次男以下が大都市に流入し、第一次大戦によって好景気になったことをきっかけにサラリーマンが登場。同時に国家に労働力や兵力として人的資源を安定供給する場としての家庭が必要とされてきたことが女性の専業主婦化していくという流れを生み出しました。
この流れは、第二次大戦後、1970年代まで続きます。
その後「これからは女性も仕事をする時代」という流れになり、兼業主婦が多数派を占めるようになり、女性が仕事と主婦業の二者択一、あるいは二重負担に悩むという状況が生まれました。
あなたは専業主婦で、子どもが小さいときは夫の転勤について引っ越し、今は受験のお子さんのため夫に単身赴任してもらい、大阪から土日毎に帰ってきてもらうという生活を2年続けてきたわけです。
夫の年齢もあがり、子どもも大きくなった今、夫が月に一度しか帰らなくなったわけを友達に「女だ」と言われ、「そんな気」になって不安になっていますが、どうか、大きな世の中の流れの中で、あなたも子どもさんも、そしてあなたの夫もバラバラにならざるを得なかった生活の仕方を選んできた我が身のこと、そして夫の身になって考えてみてもらえませんか?
ただただ浮気疑惑の不安に踊らされるのではなく、そんな生活に疲れた夫が寄港する港を職場近くに女性に求めたのかもしれないことを含めて、夫を理解するための共通の時間と場を持つよう努力してみてください。

第113回

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