男と女のQ&A【親子編】「ダイエットを止めない娘」

【Q】
中学2年の娘が、最近ご飯とパンを食べなくなりました。炭水化物ダイエットをしているらしいんです。好きな男の子ができたらしく、今のままでは相手にされないということらしいんです。女の子だからそんな時期もあるだろうけれど、どうせ長くは続かないと高をくくっていたんですが、もう1ヶ月です。確か痩せたんです。
でも、私から言わせれば元々そんなに太っていたわけでもないので、これ以上痩せてほしくないんですけど、止めないのは、学校で先生がダイエットの話をしたからみたいなんです。3年生も目前で子どもたちに目標を発表させたらしいんですけど、その時に先生が「私の目標は3キロ体重を減らすこと」って言ったらしいんです。そんなこと教師の言うことじゃないですよね。
露骨に先生批判をするわけにもいかず、娘にダイエットを止めさせるにはどうしたらいいか困っています。
 
【A】
2015年、「フランスで痩せすぎモデル禁止法」が審議され、「痩せすぎモデル」に対して規制が始まりました。この規制のきっかけは「痩せないとモデルになれない=痩せていることが美しい」という考えが、モデルの美しさを手本とする若い女性たちに蔓延し、ダイエットで死亡する人たちが出たためです。保健法を修正し体格指数(BMI)が一定基準を下回るモデルの雇用をモデル事務所に禁止する内容です。必要以上に細さを美化することを犯罪とみなし、違反した場合は最高で禁固6月の実刑と罰金970万円が科される場合があるとされています。
これにはフランスの3~4万人の未成年の女性が拒食症に苦しんでいるという背景がありました。過度なダイエットから「ファッション業界が振りまくイメージは強い社会的影響力を持っている」と法案を提出したオリビエ・ベラン議員は指摘しています。
 
フランスのモデル事務所組合は、修正案が可決されれば、フランスモデル業界は競争力を失うと反発しつつ、拒食症を減らす法律の制定は「前向きな動き」と評価しています。過度に痩せたモデルの起用を制限する法律は、イタリア、スペイン、ベルギーなど複数の国ですでに法制化されています。イエスタデイ・ワンスモアやシングなどで有名なカーペンターズのカレンが過度のダイエットで死亡したことは、皆さんもご存じではないかと思います。
 
最近渡辺直美さんのようなタレントも人気にはなってきていますが、日本のメディアは、まだまだ「痩せている」ことを美しいこととしています。中学2年の娘さんが、好きな男の子ができ、その上先生から「私の目標は3キロ体重を落とすこと」などと言われ、自分もダイエットを止められなくなっているのは「美しい=痩せている」という考え方が日本の多くのメディアや大人たちにあるからでしょう。先生には早速、学校に行って話すか、電話、手紙などでお子さんの様子を保護者としての心配としてお伝えして「目標」を撤回し、生徒に謝罪してもらうようにしてください。
 
私の研究所へも過度なダイエットから拒食症になり、食べては吐くを繰り返していた女性が複数来ていました。何かを食べたあとは指やスプーンを突っ込んで吐き、155㎝で30キロ台でないといられなくなった10代の女の子もいました。月経も止まり、周りから見ると痛々しいほどになっているのに、それでも吐くのです。
ダイエットは、肥満で内臓や血圧、関節など、身体の健康に必要な人が専門家の指導を受けながら行うものと先生、保健の先生も含めて指導し直してもらってください。
名画に出てくる女性たち、女神たちの身体はとてもふっくらとして美しく描かれています。特に有名な「ヴィーナスの誕生」は成熟し丸みを持った身体の大人の女性が海から誕生する様子を描いていて、美しいものです。
第114回

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