男と女のQ&A【職場編】「女心ってあるじゃないですかぁ?!」

【Q】
社内のセクハラに対する意識はかなり変わりました。女だからって、ひどい対応をされることも少なくなりましたし、「お茶くみ、掃除は女の仕事」みたいな習慣もすっかりなくなりました。
飲み会で酌婦代わりにされることもなくなったんです。でも、上司の言い方がとっても気になって…。
 
悪い人じゃないのは分かってるんですけど、例えば、私が髪の毛を切ってくると「髪の毛切った?って言うとセクハラだよね」とか「“たまには食事をしながら打ち合わせをしよう”なんて言うとセクハラになっちゃうよね」とか言うんです。語尾でごまかそうとするんです。どう言ったってセクハラなのに…。私は不快ですよ。私だって女だから、容姿について褒められたり、気づいてくれたりするのはちっとも嫌じゃないし、食事に誘ってくれたりすることも嫌じゃないんです。どんなときにも女心ってあるじゃないですかぁ?!そういう私の気持ちって理解されないんですかねえ?
 
【A】
職場や学校でセクハラの被害が後を絶たず、知らないうちに異性に対して性的に不快な思いをさせている人もまだまだ多いのが現実です。
対象、被対象者の性別は男性から女性の場合が圧倒的に多いのですが、女性から男性、女性から女性など同性愛を伴う性的嫌がらせ、従来半ば公然と行われてきた「体育会系」の雰囲気の中で行われる男性から男性への性的いじめもセクハラと認められるようになりました。
 
1992年に上司をセクハラで訴えた晴野まゆみさんが全面勝訴したことがセクハラ防止ガイドラインの生まれる起爆剤となり、政府も1997年の男女雇用機会均等法の改正に性的嫌がらせへの配慮を盛り込み、その10年後の2007年の改正でその範囲を拡大し、男性への性的嫌がらせも配慮の対象としましたが、官公庁、政治家、裁判所に処そうという考えはなく、性的嫌がらせを「性差別」として扱っていませんでした。
ただ、事業主には従来の「配慮義務」よりは厳しくなり、是正指導に応じない場合は企業名が公表されるようになりました。しかし、しっかりした対策を講じている企業は少なく、セクハラの風習や習慣が残って放置されているのが現状です。
 
「相手の意に反して」不快な状態に追い込む言葉や行為を指すわけですから、職場の壁にヌードや極小ビキニなつけた女性のカレンダーが貼ってあるのもセクシャルハラスメントになります。宴会で女性上司が新人男性社員に裸踊りを強要するのもセクハラになりますが、これらの根底に流れている原点は、ジェンダーギャップの考え方です。
「女性は女性らしくこうあるべきあるべき」、また「男はこうあるべき」という思想が根強く残っていて、まさにあなたのような考え方の女性がいる限り、なかなか本当の意味でのセクハラはなくなりません。
「女心」ってどんな時もある、というあなたの「女心」とは「髪を切ってこんなに可愛くなった私を褒めて、誘って!」ということですよね?それは女であることを職場で強調しているだけです。いつまで経っても職場や学校で男女差別やセクハラがなくならないのは、「女は女らしく、優しく可愛く」、「男は男らしく強くあれ、泣くな!」のような概念が一人ひとりの胸の中にあるからです。
女や男という性で生きるのではなく、人としての質を高めて魅力あるあなたになってください。
第116回

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