男と女のQ&A【恋愛編】「彼の弟が好きな私」

【Q】
彼とは就職のための会社訪問をしたとき知り合い2年間付き合っています。スーツ姿でばりばり働いている彼は頼もしく映りました。その数日後、会社から出てくる彼を待ち伏せして、偶然会ったかのように装って私から声をかけました。
半年くらい経ったころ、彼のお家で夕飯をご馳走になりました。そこで弟を紹介されたんです。長男でしっかり者の彼と次男でおっとりした弟。彼のまじめさやばりばり感に少し疲れてきていた私は、弟の方により惹かれちゃったんです。
 
その後なるべく彼の家に行くようにして弟に会う機会を増やしました。彼の誕生プレゼントを買いたいから付き合ってと弟を誘い出したり、「私が料理を作るからお兄さんが気に入るか食べてみて」とひとり暮らしの私のマンションに呼んだりもしました。
 
今では、彼に会う回数と弟に会う回数が同じくらい。弟の方も、私の気持ちには気づいていて、私に好意を持ってくれていると思います。先日、わざとホラー映画に誘って、怖がっているふりをして手を握ったんです。そしたら映画が終わるまでずっと握ったままでいてくれました。そろそろ弟に告白して、彼にも私の気持ちを話そうと思うんですが、それが弟との「別れにつながったら」と思うとどうしても話せません。
 
【A】
7月6日はサラダ記念日。「この味がいいねと君が言ったから」と歌い出した24歳の新人歌人の俵万智さんはその後の七七を「7月6日はサラダ記念日」と締めくくりました。それまでの万葉集や古今和歌集の短歌を短歌と思っていた人々にこの口語体の短歌は賛否両論を沸き起こし、その中で280万部売れ、今年で刊行30年を迎えました。
その間「サラダ記念日」の10年後、俵万智さんは34歳で「チョコレート革命」を刊行し、ここでは、道ならぬ恋も歌の中に読み込んでいます。「焼き肉とグラタンが好きという少女よ 私はあなたのお父さんが好き」と。この短歌の中の「私」はこの少女の父親のことが「好き」と言っているのですから、道ならぬ恋も恋。すでに妻もいて焼き肉やグラタンが好きな少女がいる男性を好きになってしまったと告白しています。
あなたの恋は、これに比べたらまだほんの序の口。付き合っている男性の父親が好きになったわけでもないのですから症状はまだ軽いと考えて、こじれないうちに手を打ちましょう。告白が別れにつながる心配をしているようですが、映画館であなたの手をずっと握ったままでいたのですから弟も同罪。いえ、あなたと同じ気持ちだったのでしょう。
彼の誕生日プレゼントの買い物を装って弟を連れ出したり、兄さんが気に入るかどうか食べてみてと騙して自分のマンションに呼んだり、最後はホラー映画を怖がる演技までしてお疲れ様でした。だいぶ遠回りをしましたが、兄の方の男性と2年間付き合っていての果てですから、あなたも弟君の気持ちを確かめたかったでしょう。
そこまでは仕方がなかったとしても、もうコソコソと兄の方を欺くのを止めましょう。本当は弟君の方を好きだと気づいたとき、弟君の気持ちがどうかと確かめて乗り移るのではなく、はっきり兄の方に「弟のことが好きになった」と告白して身を引くべきだったと思います。今さら、弟に告白して「別れる」と言われるのが怖いというのは魅力的な女性の考えることではありません。
厳しいようですが、恋人とか夫以外の誰かを愛することがあるのは仕方のないことですが、腹をくくる覚悟を決めて自分の本当の気持ちを伝えてください。ただ、2人とも、恋人とか兄の目を盗んで会うことに刺激を覚えて「愛している」と錯覚することは心理学上よくあることなので、兄が「そう、それならそうすれば」と身を引いたとたん、彼もあなたも気持ちが冷めるかもしれませんので、申し添えておきます。
もう一つ、俵万智さんが彼のために作ったのは実は「サラダ」ではなく、「カレー味の鶏の唐揚げ」だったそうです。
第122回

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